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炭素税と排出量取引を活用 経済構造転換が不可欠

Earth新潮流 三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚氏

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G20にあわせて発表された「脱炭素社会」実現のための政策手法が有識者懇談会などで検討されている。議論の中心はカーボンプライシング、炭素税と排出量取引だ。

思い起こせば10年前にも同様の議論があった。

2008年当時の自民党福田内閣で排出量取引と炭素税が比較・検討され、民主党鳩山内閣は10年3月に排出量取引や炭素税の導入などの地球温暖化対策基本法を国会に提出した。

鳩山内閣の辞職で国会審議が振りだしに戻り、東日本大震災で原発が止まったことで検討も停滞していたが、1年後に予定されるパリ協定の目標強化の交渉に向けて再び動き出した。

◎ ◎ ◎

12年に温暖化対策税が導入され、1トン当たり289円と国際的にみれば低いものの、税収は年間2600億円以上と言われ、二酸化炭素(CO2)排出削減投資や二酸化炭素地下貯留の技術開発などに活用されている。

また、大規模な排出設備に排出規制を課すキャップ&トレード型の排出量取引と言えば欧州連合(EU)だったが、今や中国や韓国でも導入され、また米カリフォルニア州や東京都など自治体へと広がりをみせている。

またパリ協定のもとで京都議定書によるクリーン開発メカニズム(CDM)に代わる新しいルールの交渉が行われている。10年間で政策手法を巡る環境は様変わりであり、またパリ協定で合意された2度目標が議論の前提になっている。

しかし、議論の景色は変わらないという意見も聞こえなくはない。例えば「炭素税か、排出量取引か」という対立軸だ。炭素税は排出者に税金を課すことでCO2削減を促すが、想定通りに排出量が減るとは限らない。排出量取引では排出可能量は決まるが、排出枠の取引価格が変動し、コスト管理が難しい。一長一短だ。

そのため強みを生かし、弱みを克服するための工夫が重ねられている。炭素税では税収を活用した補助金制度の事後評価が行われ、1トン削減するためにいくら税金が投入されたかなど排出量取引の考え方を取り入れた検証も行われ、補助金の効率化に活用されている。環境省の補助事業では平成28年度完工分は1トン当たり7500円と当初より2割ほど改善されている。

また排出量取引では価格変動が指摘されるが、EUは市場介入基金など金融的な手法を導入し、価格シグナルを復活させている。また、メキシコ、南アなどのように炭素税を基本としつつも、排出量をオフセットすることで炭素税負担を減らすハイブリッド型も実施されている。

2つの制度に優劣をつけることの意味はなく、世界銀行や国際排出量取引協会の研究者や実務者を集めての議論では、規制対象に応じて使い分ける「炭素税も、排出量取引も」というのが主流になってきている。

◎ ◎ ◎

もう一つ気になるのは「国富の流出」だ。10年前も排出量取引の価格変動と並んで指摘されていた。当時と違うのは途上国を含めて全ての国で削減目標を持っており、日本だけが負担を強いられるわけではないこと。日本の限界削減費用が高いなら、むしろ積極的にパリ協定を利用するのも一つの考えだろう。

米国の研究グループは各国が単独でパリ協定の削減目標に取り組む場合と国際排出量取引を通じて協力しあった場合のコストを比較した。単独で行うと30年に1トン当たり100ドル以上の国もあるが、協力すれば4割以下になるという。経済学の初歩である貿易や国際分業と同じくコスト引き下げ効果は絶大だ。

これを実践するのが「2020年の排出量以上に増やさない」を目標にしている国際航空部門だ。ほぼすべての航空会社で旅客増加により燃料消費、排出量が増えると見込まれる。そこで、航空部門以外での削減による排出枠を活用する。航空版「国富の流出」の意見もないわけではないが、航空部門の持続的な成長のためには有利と判断したものだ。

この10年間の最大の変化は経済全体の構造転換の重要性が認識されたことだろう。構造転換は痛みを伴うが避けては通れない。ソフトランデイングのための施策も必要だ。炭素税に選択肢を限定せず、排出量取引、削減量に応じた補助金、構造転換支援など様々な政策を組み合わせ、「国家100年の計」として産業構造を促すべきではないだろうか。

[日経産業新聞2019年8月30日付]

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