昨年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、公選法違反罪に問われた元法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=の第12回公判が26日、東京地裁であった。「被買収者」の証人尋問が始まり、自民党の今田良治広島市議(73)=安佐北区=が検察側の証人として出廷。50万円を受け取ったと認め、買収目的の現金だったと証言した。無罪を訴える弁護側は証言の信用性を巡って質問を重ねた。

 今田市議は検察側の主尋問で、昨年3月24日に広島市安佐北区の自身の後援会事務所を克行被告が訪れ、5日後に告示が迫った市議選の情勢を話した後、30万円入りの白い封筒を差し出されたと説明。違法性を感じ、受け取りを拒否したが「まあまあ」と机の上に置いて帰られたという。

 証言によると、克行被告は同年6月1日にも事務所を訪れ「参院選で(妻の)案里を応援してもらうのは難しいでしょうね」と発言。今田市議が支援を断ると、20万円入りの封筒を渡された。保管していた1回目の封筒を持ち出して返そうとしたが、拒まれた。

 今田市議は「私の支援者に投票を働き掛けてほしいのだと思った」と強調。返金しようと同月3、4、5日に安佐南区の克行被告の事務所の駐車場で待機したが、会えなかったとした。同年12月に安佐北区の二つのまちづくり団体に50万円を寄付し、今年8月に別の50万円を用意し、克行被告の事務所に送ったという。

 続く反対尋問では、弁護側が昨年6月1日まで返金しようとしなかった理由を質問。今田市議は「私の選挙もあった。返す方法は非常に難しい」と述べた。さらに弁護側は、克行被告の事務所の駐車場で待機したとする3日間は国会会期中の平日で、克行被告は地元にいない可能性が高かったとし「本当に返す気があったのか」と追及。まちづくり団体への寄付は、選挙区内での寄付を禁じる公選法違反に当たると指摘した。今田市議は「深くは考えていなかった」と語った。

 克行被告の公判は弁護人解任の影響で、今月4日に約1カ月半ぶりに審理が再開。来年3月末まで週3、4日の公判期日が決まっている。関係者によると、2月末までに被買収者の証人尋問を終えた後、被告人質問などを進め、判決は春以降にずれ込む見通しだ。

 ▽逮捕ほのめかされた 克行被告秘書、検察の聴取証言

 26日にあった河井克行被告の公判で、光元博美公設第2秘書の証人尋問があった。光元秘書は、検察当局の任意聴取を受けた際に逮捕をほのめかすような発言があったと証言した。

 弁護側が反対尋問で任意聴取の状況をただすと、光元秘書は聴取は60回程度受けたとし、容疑内容の説明はなかったと返答。1月ごろの聴取で「正直にお話しする方がいいか、家からお母さん(光元秘書)がいなくなる方がいいか」と言われたと述べた。

 昨夏の参院選広島選挙区で初当選した克行被告の妻案里被告の陣営で、違法報酬疑惑が浮上した車上運動員を巡る聴取では「話していない言葉が文章になった。訂正されないまま供述調書に署名した」と強調。検事から「こちらも調べているから創作ではない」と言われたという。「取り調べに迎合したとは思っていない」とも語った。

 光元秘書は検察側の証人。検察側の主尋問では、後援会関係者から返却された、現金が入ったとみられる封筒を2回受け取り、克行被告に返したと述べた。

【河井克行被告第12回公判詳報】
今田市議証言<1>(克行被告と)一緒に国政報告耐えられない
今田市議証言<2>買収のお金と感じました
今田市議証言<3>(収支報告書に)買収という項目ありません
今田市議証言<4>先生が尽力されたかどうか分かりません
今田市議証言<5>極力付き合いをしていませんでした
今田市議証言<6>スタッフに知られるのはまずいと思いました
今田市議証言<7>犯罪行為だから、うそをついてはいけないと思いました
今田市議証言<8>可部線ははっきり嫌がらせがありました
光元秘書証言<1>(三矢会)集票組織のようなものだと理解 
光元秘書証言<2>指示が代議士からありました
光元秘書証言<3>紙の枚数では20枚ぐらいです
光元秘書証言<4>回数もたくさん呼ばれていて覚えていないこともある
光元秘書証言<5>私が罪に問われるようなことがあるのかと思った