元祖が認めた!輪島功一さん、入江聖奈は「子…いや孫ガエル」

スポーツ報知
入江の金メダルに歓喜した輪島功一さん

◆東京五輪 ボクシング(3日、両国国技館)

 「カエル作戦」でボクシング女子フェザー級金メダリストとなった入江聖奈(20)の快挙を、元祖カエルボクサーは大号泣しながら祝福した。必殺の「カエル跳びパンチ」を武器に3度の世界王者となった輪島功一さん(78)は「子…じゃないね、孫ガエルだよね。信念、人間の本能を教えてくれた」と感謝。また、鳥取県初の金メダリスト誕生に、地元・米子市の伊木隆司市長(47)は「全米が泣いた!」と歓喜した。

 勝ち名乗りを受けた瞬間、カエルのようにピョンピョン跳びはねる入江の姿をテレビ越しに見つめ、輪島さんの涙腺は決壊した。「見てたら涙が出てきちゃったよ…。涙が…涙が出てくるよなあ」。ひと呼吸を置き、感謝の言葉を続けた。「ずっと『ガンバレ~!』って応援してた。ボクシング界にとって大きなことをやってくれたよ。金メダルだけじゃないんだ。ボクシングへの前向きな気持ちが伝わって感動したんだよ…」

 カエルを偏愛し、準決勝では「ツノガエル作戦」、決勝では相手に圧をかけ続ける強気の「殿様ガエル作戦」で世界の頂点に立った入江だが、かつてリング上で「カエル」を表現した元祖が輪島さん。「ツノガエルがどうとかってニュースで出てたから『なーに言ってんのよ、カエルは輪島でしょ?』と思ったら女の子で。だから、入江さんは子…じゃないね、孫ガエルだよね」

 大きくダッキングした後、ジャンプしながらフックを見舞う必殺の「カエル跳びパンチ」。1971年の世界スーパーウエルター級タイトルマッチで王者カルメロ・ボッシ(イタリア)に繰り出し、翻弄(ほんろう)。ローマ五輪銀メダリストの強敵から王座を奪取した。「ボッシは強かった。どうしたら勝てるかと頭を使った。ビックリして冷静さを失ってたよね。天下のカエル跳びは勝つために生まれたんだ」

“作戦”で話題も「カエルは俺でしょ」 奇策のように聞こえる入江のカエル作戦も、元王者の目には金メダルへの最善策に映った。「とにかく前に出て『なんとかしてやったろう』という信念がある子だと思ったよね」

 現役引退後、87年に開いた「輪島功一スポーツジム」は当時としては珍しく女性にも門戸を開いた。多くの女性練習生と女子プロボクサーが誕生した。「昔は『女がボクシングなんてやるもんじゃない』って風潮があったよ。でもね、ボクシングは人間の本能なんだ。入江さんは大切なことをみんなに教えててくれた。金メダルで、またボクシングの仲間が増えたらいいね」

 孫ガエルの栄光はまぶしかった。「いやあ、頑張った。頑張ったよな…」。かつて「炎の男」と呼ばれた男は、もう一度、静かに泣いた。(北野 新太)

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