図解
※記事などの内容は2011年9月7日掲載時のものです
東日本大震災の発生から間もなく半年。津波に襲われた東北の太平洋沿岸部では、港湾設備の復旧や東京電力福島第1原発事故の先行きが見通せないことから、工場の閉鎖を決める企業が相次ぎ、いまだに再開のめどが立っていない工場も少なくない。被災地の復興が絡むだけに、閉鎖と再開のはざまで苦悩する企業も多く、震災の深い爪痕は色濃く残ったままだ。
鉄鋼大手JFEスチールは電炉子会社の東北スチール(仙台市)の再開を断念。段ボール最大手レンゴーも仙台工場(同)を閉鎖し、内陸部の宮城県大和町での新工場建設を決定した。
マルハニチロホールディングスはグループ会社「大洋エーアンドエフ」の石巻食品工場(宮城県石巻市)を、ニチレイはグループの水産会社「まるいち加工」の気仙沼工場(宮城県気仙沼市)を、それぞれ閉鎖。日本水産も宮城県女川町の2工場について、従業員を転勤させるなど、再開を事実上断念した。
福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域にある工場は、そもそも立ち入りさえできない。福島工場(福島県浪江町)を抱えるエスエス製薬は「再開についての判断は一企業ではできない」と頭を抱える。同区域にブレーキ用摩擦材料の工場を持つ日立化成工業も再開を諦め、他拠点で代替生産を始めた。子会社の2工場があるTOTOも「再開のめどは立っていない」としている。
「放射能の風評を考えると、現実には(再開を)諦めている。ただ、地元の復興に水を差すことになり、簡単には結論は出せない」-。福島県に拠点を持つあるメーカー関係者は、こう苦しい胸の内を明かす。子会社である「日本海水」の小名浜工場(福島県いわき市)が製塩事業を手掛けてきたエア・ウォーターは、事故の影響をにらみながら、年内に最終結論を出す意向だ。
生化学工業の子会社「三陸加工」(宮城県気仙沼市)は、鎮痛剤などの中間原料を生産する工場が津波で全壊。気仙沼港で原料となるサメの水揚げが戻れば工場再開を検討するが、現時点では「いつになるか分からない」という。
被災した岩手、宮城、福島各県でも、内陸部に位置する自動車、電機関連などの工場は比較的立ち直りが早かった。しかし沿岸部を見ると、原発事故の影響が残る福島はもちろん、津波で深刻な打撃を受けた宮城の各港湾に接する素材メーカーや水産業者などの工場は、再開への道のりは険しいのが現状だ。
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