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夫婦の姓 社会変化に応じた制度に

 「夫婦は別姓であってもよい」と考える女性の割合が、初めて5割を超えた。

 全国の既婚女性約6千人を対象に調査した国立社会保障・人口問題研究所が先月、そんな結果を発表した。5年ごとに調査しており、別姓の考え方に賛同する人は、前回を9ポイント上回る50・5%に上った。

 民法は、結婚した夫婦はいずれかの姓を選ぶよう義務付けている。ただ姓が変わると、仕事や日常生活に支障を来すことも多い。姓名を人格そのものと考える人もいるだろう。別姓容認が増える背景には、そうした事情がうかがえる。

 夫婦別姓を求める人たちにとって、最大の壁は司法である。

 東京地裁は今月2日、国民の意識の変化に理解を示しながらも、民法の規定を合憲とする判断を示した。家族を社会の基礎集団と捉え、姓が同一であることに合理性を認めた最高裁判決(2015年)を踏襲した。

 この最高裁判決で注目された点の一つに、改姓で不利益が生じることを認めた上で「不利益は旧姓使用が広がれば緩和される」と指摘したことがある。

 旧姓使用は01年に国家公務員に認められたほか、民間では大手企業を中心に6割以上が容認しているとの調査結果もある。

 それでも、法的裏付けのない旧姓使用では、社会の変化に対応しきれてはいない‐。そうした声が高まっている。

 一つには晩婚化がある。結婚までに、男女がそれぞれ職場などでキャリアを積み重ねるカップルも増え、姓を変える方は各種の名義変更などで相当な煩雑さを強いられている。

  法制審議会(法相の諮問機関)が、希望に応じて改姓するかどうかを決める選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したのは1996年のことだ。政界に反対論も強く、法案提出には至らなかった。それから23年の月日が流れている。

 もちろん今も、同姓であることに家族の絆を感じる人は少なくない。だが現状での旧姓使用に不都合を感じ、婚姻届を出さず事実婚を選ぶ人たちもいる。多様な意見が折り合えるルールはできないだろうか。夫婦別姓は男女を問わない問題である。

  男女雇用機会均等法成立(85年)から34年となり、家族観も大きく変わった。例えば冒頭の調査によると、家庭の重要事項は父親が最終決定すべきだと考える人は64・5%で、10年前から13ポイントも下がった。妻は専業主婦であるべきだという人も10ポイント減り38・1%だった。

 多様な価値観が尊重される社会を目指したい。柔軟な選択肢を作る方向で、民法改正もタブー視せずに議論を深めたい。

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