食の安全考

スイセンをニラと間違えて食べてしまったら… そっくりの有毒植物にご注意を! イヌサフランなど死亡例も… 

【食の安全考】スイセンをニラと間違えて食べてしまったら… そっくりの有毒植物にご注意を! イヌサフランなど死亡例も… 
【食の安全考】スイセンをニラと間違えて食べてしまったら… そっくりの有毒植物にご注意を! イヌサフランなど死亡例も… 
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家庭菜園や山菜採りを楽しむ人が増えるこれからの季節。自然の豊かな恵みが満喫できる一方、誤って有毒な植物を食べたことによる食中毒が毎年のように発生している。死亡例も報告されており、専門家は注意を呼び掛けている。

よく似ていたので間違えた

石川県珠洲市で3月、農産物の直売所でスイセンがニラと間違えて販売され、買って食べた家族4人が頭痛や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。スイセンは、豚キムチの具材として使われていた。同県食品安全対策室によると、スイセンに含まれる毒性成分が原因の食中毒で、幸い全員が軽症だった。同室によると、出荷した生産者がニラを栽培していた畑の近くでスイセンを育てており、「似ていたので間違えた」と話しているという。

また、兵庫県尼崎市で同月、アルコール依存症患者の自立を支援するNPO法人施設で、昼食を食べた職員や通所者11人のうち10人が吐き気などの症状を訴えた。保健所生活衛生課によると、スイセンに含まれる毒性成分による食中毒で、全員が軽症だった。通所者がプランターのスイセンをネギと思い込み、昼食用の中華丼の具材として使用したことが原因だ。同施設では以前、プランターでネギを育てていた。同課の担当者は「ネギとスイセンは見た目の形状が明らかに違うが、ネギと思い込んでいたので違いに気付かなかったようだ」と話す。

スイセンは、葉がニラに、球根がタマネギや山菜のノビルに似ており、食中毒は4~12月の花が咲いてない時期に多く起きている。

厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」によると、スイセンは全草が有毒だが、特に球根に毒成分が多く、致死量は10グラム。海外では死亡例も報告されている。食べて30分以内で吐き気や下痢、発汗、頭痛などを起こす。

ニラと誤食するケースが多いが、ニラ特有のにおいがスイセンの葉にはない。不安に思ったらにおいを確認することが勧められる。

同省によると、有毒植物を食べたことによる食中毒は、平成17年から26年の10年間で202件発生、患者は973人、死亡者は7人に上る。消費者庁によると、27年は患者が42人、うち4人が死亡。死亡者数が過去10年間で最多となった。

加熱しても毒は減らない

ジャガイモは、芽や皮、未成熟なものに有毒成分が多く含まれる。有毒成分は加熱調理しても減らない。食後30分から半日ほどで、吐き気や下痢、めまいなどの症状が出る。

食中毒のほとんどが学校や幼稚園で栽培されたジャガイモが原因で、春植えの収穫時期にあたる5~7月が多い。東京都品川区では25年、小学校で栽培したジャガイモをゆでて食べた12人のうち、4人が吐き気などを訴えた。都健康安全研究センターは「子供は少量の有毒成分でも食中毒になる危険がある」とし、予防のために、芽の部分は取り除く▽緑変した皮は厚めにむく▽自分で栽培した小さい未成熟なジャガイモは要注意▽苦味やえぐ味がある場合は食べない-などを挙げる。

調理前にしっかり確認を

昨年、札幌市内の80代の男性と山形市内の90代の女性の2人がそれぞれ、庭などに生えていたイヌサフランを食べたことによる食中毒で死亡している。

イヌサフランは含まれる成分が鎮痛薬として使われている。花や葉、球根を食べると嘔吐や下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難などを起こす。葉が山菜のギョウジャニンニクやギボウシに、球根がジャガイモやタマネギに似ている。

また、野草のトリカブトの葉やグロリオサの球根を誤食し、死亡したケースも報告されている。

厚労省は有毒植物による食中毒対策として、家庭菜園で野菜と観賞植物をいっしょに栽培しない▽食用と確実に判断できない植物は食べない▽山菜採りでは1本1本よく確認して採る▽調理前にもう一度確認-と呼び掛けている。(平沢裕子)

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