座り心地で新幹線に挑む 近鉄の新型特急「ひのとり」
近畿日本鉄道は5日、名古屋と大阪を結ぶ新型特急列車「ひのとり」を報道陣に公開した。3月14日にデビューし、近鉄名古屋駅と大阪難波駅を2時間5分でつなぐ。座席の広さや座り心地、カフェスポットなどの設備を充実し、料金は4540円(通常車両)。JR東海の東海道新幹線より安い料金と快適な空間をアピールし、観光客などの獲得を目指す。
「お得に、ゆったり、快適に移動していただけます」。5日、報道陣を乗せたひのとりは近鉄名古屋駅(名古屋市)から伊勢若松駅(三重県鈴鹿市)までの区間を往復した。近鉄名阪特急の新型車両は2003年の「アーバンライナー・ネクスト」以来、17年ぶり。力強さと華やかさをイメージした深紅の車体が特徴で、21年3月までに11編成を投入する計画だ。
意識するのは、同じ名古屋―大阪間を走るJR東海の東海道新幹線だ。近鉄によると、名阪間の新幹線と近鉄特急の利用者比率は8対2で新幹線が圧倒的に強い。最短で47分と、近鉄の半分以下の時間で大阪に到着できるためだ。だが「通常車両でもグリーン車と同じ広さで、料金は2000円程安く抑えた」(湖東幸弘執行役員)。料金と快適性のグレードアップで鉄壁、東海道新幹線に勝負を挑む。
プレミアム車両の座席の前後間隔は130センチメートルと、JR東日本などのグランクラスと並び国内最大級だ。後部座席に気兼ねなくリクライニングできる「バックシェル」を採用し、通常車両を含め全座席に設置した。デッキには国内初のカフェサーバーや、ベンチスペースも設けている。
大阪での降車駅の違いもポイントだ。東海道新幹線の停車駅は新大阪駅だが、近鉄特急は大阪難波駅。道頓堀やあべのハルカス、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどへ向かう利用者にとっては乗り換えが便利でアクセスがよいという。
近鉄の名阪特急はバブル期の1990年度をピークに利用者が3割減り、厳しい状況が続いている。V字回復を果たすには時間に余裕のある外国人観光客などの取り込みがカギを握る。「ちょっと時間はかかるけど快適な空間を楽しみたい」という乗客のニーズを上手につかむ必要がありそうだ。
(林咲希)
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