舞の海の相撲俵論

散々たたいた後はすっかり五輪に…テレビの見方を考える

 相撲協会を散々たたいた後はすっかり五輪の話題に移ってしまった。テレビの情報番組は相変わらず節操がない。

 この数カ月で相撲協会は完全に悪者にされてしまった。角界の話題は安定した視聴率が取れるのだろう。横綱の暴力事件に始まり、立行司のセクハラ疑惑や十両力士の無免許運転の疑いなどが発覚するたびに大騒ぎ。そして、これまで関心を示さなかった理事候補選挙の当落予想まで大々的に取り上げられた。

 ところが、講演の仕事で全国を訪れてもあまり不祥事に関する質問を受けることはない。本当に相撲が好きな人はあまり関心がないのか。一連の騒動に怒っている番組の出演者はそれほど相撲が好きではないのかもしれない。

 テレビのご意見番は「こんなことがあると、相撲を見るのが嫌になる」などと憤ってみせるが、初場所は15日間満員御礼。早朝に国技館の前を通ると、大勢が当日券を求めて列をなしていた。

 悪がはびこる相撲協会に正義感の強い1人の親方が改革を掲げて立ち向かっていくという構図を、情報番組はつくりあげた。しかし、その親方の部屋の元力士が地位確認を求めている裁判はほとんど報道されない。

 その件を知らないのか、いや知っていても見たくない、触れたくないのだろうと怪しんでいる。自分たちがつくったストーリーにそぐわないからか。改革という言葉だけをもてあそびながら、その中身は掘り下げようともしない。

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