ドラクエシリーズ作曲家・すぎやまこういちさん90歳死去 ガロ「学生街の喫茶店」などヒット曲も多数

スポーツ報知
「ドラゴンクエスト」の音楽を始め、数々の楽曲を世の中に送り出したすぎやまこういちさん

 世界的人気を誇るゲームソフト「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽やフォークグループ・ガロの「学生街の喫茶店」などで知られる作曲家のすぎやまこういち(本名・椙山浩一)さんが9月30日、敗血症性ショックのため死去したことが7日、分かった。90歳だった。「ドラゴン―」の発売元のゲーム会社「スクウェア・エニックス」のホームページで発表された。葬儀・告別式は親族・近親者で行った。後日お別れの会を予定しているが、日程などは未定。

 日本の音楽シーンを代表するすぎやまさんが死去した。数々のポップスやゲーム音楽、競馬のファンファーレ、2000曲を超えるCM曲…。時代とともに、新しい音楽カルチャーを創り出した。

 クラシック音楽などが常に響き渡る家庭に育ち、幼い頃は指揮者に憧れた。独学で音楽を学び、東大の卒論はオープンリールに録音した音声で提出。「音楽に関わる仕事がしたい」と開局と同時にフジテレビに入社。ディレクターとして「ザ・ヒットパレード」などを演出。1965年に退社後はフリーの作曲家として独立した。

 クレジットは「誰もが分かるように」とひらがなに。ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」や自らがグループ名を命名したザ・タイガースの「花の首飾り」「君だけに愛を」、ガロの「学生街の喫茶店」など多くのヒット曲を手掛けた。ヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」は、島谷ひとみのカバーで再ヒットした。

 最大のヒットは、86年に任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」で第1作が発売された「ドラゴンクエスト」シリーズ。開発の途中から参加したすぎやまさんは、当初のロック調からクラシック要素を取り入れた音楽への大幅変更を決断。勇者が冒険に挑む躍動感などを表現し、「異色のゲーム音楽」と評された。

 当時、ファミコンカセットのデータ容量は極めて少なく、最大で3つの音しか重ねることができなかった。「無駄のないシンプルなメロディーに、何度でも遊べるように繰り返し聴いても飽きのこないもの。クラシック音楽のような普遍性が必要だった」。ゲーム機の進化とともに作編曲を重ね、最終的には交響組曲にまで昇華させた。

 同時に、音楽は「ゲームの背景として流れているもの」ではなく、「それ自身が物語に必要な要素」との矜恃(きょうじ)を持っていた。2019年にドラクエが3DCGアニメ化された際には、「監督には『劇中のセリフと同じくらい音楽にも何かを語らせてください』と伝えました」と誇らしげに語った。

 「ドラクエ」の名前は世界中に広がり、日本を代表するゲームの一つに。代表曲「ロトのテーマ」は、今年7月の東京五輪開会式の入場行進で栄えあるトップバッターの楽曲に選ばれ、世界中のファンを沸かせた。最後の仕事は、今年5月に発表されたドラクエの最新作「―12 選ばれし運命の炎」(発売日未定)の作曲。すぎやまさんが亡くなっても、その功績はドラクエの冒険と共に生き続ける。

 ◆すぎやまこういち 本名・椙山浩一。1931年4月11日、東京都台東区生まれ。東大教育学部卒業。59年にフジテレビ開局と同時に入社。ディレクターとして「ザ・ヒットパレード」などを担当。65年に退社し、フリーの作曲家に。86年発売のゲームソフト「ドラゴンクエスト」の音楽を担当。88年「交響組曲ドラゴンクエスト3」で日本レコード大賞特別企画賞受賞。2018年、旭日小綬章受章、20年、文化功労者。

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