米国の対中関税は不当、WTO一審が報告書
【ジュネーブ=細川倫太郎】世界貿易機関(WTO)の第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)は15日、米国の中国製品に対する関税は不当とする報告書をまとめた。米中貿易戦争を巡ってWTOが判断を下すのは初めてで、中国の主張を認めた。米国は裁定に不服な場合、60日以内に上訴できる。
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中国製品にのみ関税を課す措置は、WTOのルール違反にあたるとの見解を示した。報告書は「米国は措置の正当性を証明する責任を果たしていない」などと指摘した。
ロイター通信によると、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は今回のWTOの報告書を非難した。
トランプ米政権は中国の知的財産権の侵害や技術移転の強要を問題視し、米通商法301条に基づき中国からの鉄鋼製品などに制裁関税を課した。対象は2300億ドル(約24兆円)以上にのぼる。これに対し、中国は関税での差別を禁じるWTOの最恵国待遇の原則などに反すると主張。2018年4月にWTOに提訴し、19年からパネルが審理してきた。
米国はWTOの判決を受け入れない可能性が高い。WTOの最終審にあたる「上級委員会」は米国がメンバーの選任を拒んでおり、人員不足により機能が停止している。仮に米国が上訴したとしても、現状では上級委の審理は不可能で、WTOの場での米中の貿易紛争の解決は見通せない。