話題の肝

VSコンピューター制した「人類の執念」 将棋電王戦、勝因はゲリラ戦術だった

 まず人選では、棋士同士の対局での実績や段位に関係なく、今回は日ごろからコンピューターを棋道研鑽(けんさん)に積極的に活用している棋士5人を選抜。昨年12月から各々に対戦するソフトを貸し出した。これまでも事前にソフトは貸し出されていたが、対局が近づいてからで、多くの棋士はぶっつけ本番で電王戦に臨んでいた。今回は、阿久津八段を含めて5人の棋士全員が、数百局もの練習対局を重ねて本番を迎えていた。

バグ狙い鬼手連発

 1秒間に数百万~1000万手以上を読むコンピューター相手では、互角に終盤の寄せ合いに突入したらまず勝ち目はない。中盤も、棋士側が手筋や定跡通りに指していてもコンピューターは正確無比でミスはしない。過去2回の経験からプロ側は「序盤で過激に鬼手を連発し、中盤を飛ばして一気に終盤に持ち込む」作戦が有効と結論づけた。

 今回、第2局で永瀬拓矢六段(22)がソフト「Selene」に王手放置の反則勝ちしたが、これは500を超す練習対局で、通常はあり得ない角が成るところで成らない「角不成」での王手に対し、ソフトが王手を防がないというバグ(不具合)を見抜いていた成果だった。

 ガップリ四つの力将棋ではなかったが、とにかく今回は棋士が勝った。だが、弱点を見抜かれたソフトの進化はとどまることを知らないのは確かだ。

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