G20会合開催、印パの係争地カシミール現地ルポ 観光客増加の理由

G20関連会合の開催を歓迎する横断幕が掲げられた市街地の市場=インド北部スリナガルで2023年5月23日午後0時9分、川上珠実撮影
G20関連会合の開催を歓迎する横断幕が掲げられた市街地の市場=インド北部スリナガルで2023年5月23日午後0時9分、川上珠実撮影

 インドとパキスタンが領有権を争うインド北部ジャム・カシミール地方の中心都市スリナガルで22~24日、主要20カ国・地域(G20)観光ワーキンググループ会合が開催された。モディ政権は、国内で唯一、イスラム教徒が多数派の州だったジャム・カシミールの自治権を2019年に剥奪。主要な国際会合の開催は自治権剥奪後初めてで、インド側はこの機会を利用して国内外の観光客を呼び込もうとしている。普段は取材が難しい現地を訪れ、実情を探った。

治安改善に自信

 「G20会合が国内だけでなく、より多くの海外の観光客を集めることにつながると期待している」。会合に臨んだキシャン・レッディ印観光相は22日の記者会見で力強く語った。

 記者が22、23日にスリナガルの中心市街地を歩くと、「カシミールへようこそ」などと書かれたG20のロゴ入りの看板や垂れ幕が並び、インド人観光客が散策していた。西ベンガル州から両親と来たエンジニアのアリンガム・ゴシュさん(38)は「カシミールに来たのは初めて。ずっと美しい自然を見たいと思っていて、最近は治安状況も良くなっていると聞いて来た」と買い物を楽しんでいた。

 ヒマラヤ山脈のふもとに位置するカシミール地方は、針葉樹に囲まれた広大なダル湖をはじめとする美しい景観から「地上の楽園」の異名を持つ。一方で、長年にわたって、インドからの独立やパキスタンへの編入を求める武装勢力とインド当局との衝突が繰り返されてきた地域でもある。スリナガル中心部でも数年前までは、治安部隊の車列に石を投げる若者たちの姿が頻繁に見られたという。しかし、インド政府によると、昨年はインドが英国から独立した1947年以降、最も多い約1800万人の観光客がジャム・カシミールを訪れたという。

 観光客増加の背景には、新型コロナウイルス禍の収束に…

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