レスリングの全日本選抜選手権最終日は16日、東京・駒沢体育館で行われ、女子57キロ級決勝で2016年リオデジャネイロ五輪63キロ級金メダルの川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が昨年の全日本選手権覇者で五輪5連覇を目指す伊調馨(いちょう・かおり)(ALSOK)を破り、代表争いはプレーオフに持ち込まれた。
川井梨に半年前のような迷いはなかった。「自分のレスリングを出し切れば勝てる」。女子57キロ級決勝は本来の積極的な攻撃で主導権を握り、伊調に6-4で雪辱した。
第1ピリオドは互いに慎重に見合った。伊調が消極的として30秒間のアクティビティタイムとなり、川井梨が1点を先取。1-0で迎えた第2ピリオド。先にタックルを決めたのは川井梨だった。バックを取るなど5-0とリードし、残り1分20秒から猛追を受けたが、振り切った。
伊調に敗れた全日本は「(タックルに入る)勇気が出ないまま6分間が終わった」との反省が残った。コーチらと相談し、たどり着いた答えは「どれだけ苦しくても試合は6分しかない。残り1秒から勇気を出しても意味がない」。見失っていた本来の攻撃力。それを発揮した結果が吉と出た。
セコンドには62キロ級で世界選手権代表を先に決めた妹、友香子がついた。「私が負けると友香子が悲しむ」。夢は姉妹での東京五輪出場。負けられない理由があった。伊調とのプレーオフの勝敗の鍵を問われた川井梨は、「自分の気持ちだと思う」。最終決戦でも勇気を貫く。(岡野祐己)