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金融庁が3メガ銀の米国ビジネスを注視、金利上昇受け-屋敷審議官

  • 「ドル調達は3メガの命綱」事業モデルの観点で対話・モニタリング
  • 海外での非投資適格向け事業やウエート高まる有価証券運用にも関心

金融庁が邦銀3メガグループの米ドル資金の調達動向に関心を強めている。米国の利上げや量的引き締めを受けた調達コストの上昇や、需給の逼迫(ひっぱく)により調達が難しくなれば、国内で低金利に苦しみ、米市場で収益拡大を目指すビジネスモデルに影響を与えかねないためだ。

  屋敷利紀審議官は、ブルームバーグとのインタビューで、「ドル調達は3メガの命綱とも言えるほど重要になってきている」と指摘。その上で、量やコストだけでなく、「ビジネスモデルの観点からも、しっかりと対話、モニタリングしていく必要がある」と述べた。

Japan Financial Services Agency Deputy Director-general Toshinori Yashiki Interview
金融庁の屋敷利紀審議官
Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  低金利下で国内での収益拡大が厳しい邦銀は、米市場で融資を拡大している。ブルームバーグのデータによると、三菱UFJフィナンシャル・グループは今年の米国ローン・ブックランナーランキングで、ゴールドマン・サックス・グループバークレイズを抜いてトップ5位に入る勢い。みずほフィナンシャルグループは11位、三井住友フィナンシャルグループは15位。5年前はそれぞれ11位、17位、30位だった。

  邦銀と米銀行のドル資金調達について屋敷氏は、超低金利の環境では大差はなかったものの、米金利上昇により「本源的なドルの調達手段である預金を持っていない邦銀は明らかに不利」な状態にあるとの認識を示した。また、為替市場での円安進行は「ドル需要が強い表れで、調達する際に競合が激しくなる」とも指摘した。

  米連邦準備制度理事会(FRB)は今年3月に利上げを決定し、長期にわたり続けてきたゼロ金利政策を終了。その後はインフレ抑制を目指し、利上げのペースと幅を拡大している。

上昇続けるドル調達コスト
 
 

非投資適格企業向けビジネス

  金融庁は、邦銀メガの海外での非投資適格企業向け融資の動向にも目を光らせている。もともと信用力の低い非投資適格企業は、金利上昇時にショックを受けやすい。屋敷氏はこうした企業は「脆弱(ぜいじゃく)であることは間違いなく、注視していく」との考えを示した。

  屋敷氏は、国内で金融仲介機能を果たすために、その収益源を海外の非投資適格ビジネスに求めること自体は否定しないとした。ただ、この事業には銀行だけでなく、グループの証券会社も関わるケースが多いとして、「グループ、グローバルのリスク管理が必要になる」とも述べた。

外債運用ではリスク管理能力を注視

  急激な米金利上昇で含み損が発生している有価証券については、必ずしも早期の損失処理が必要と考えているわけではなく、「環境によっては先送りした方がいい場合もある」と話した。その上で、「含み損が自分たちのリスク管理能力や、経営体力の範囲内にあるか、行内で経営陣も含めて議論しているかを重点的に対話、モニタリングする」との方針を示した。

米金利上昇で含み損が拡大

3メガの外債評価損の推移

Source: 会社資料から

  屋敷氏は3メガでは収益に占める有価証券運用のウエートが大きくなっており、関連損失で資本や収益力がそがれ、金融仲介機能が発揮されなくなるリスクを注視していると述べた。「特にメガバンクには危機時でも、国内で金融仲介機能をしっかり果たしていただく必要がある」と語った。

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