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2001年に兵庫県明石市で起きた歩道橋事故を教訓に、兵庫県警が作成した「雑踏警備の手引き」のネット上での閲覧回数が10月は月平均の250倍を超える約4万3000回に急増した。韓国ソウルの繁華街・
明石の事故では、花火大会の観覧客が歩道橋に集中し、11人が死亡、183人が重軽傷を負った。警備を怠ったとして現場の警察署幹部が起訴され、実刑判決を受けるなどした。
それまで雑踏警備は主催者の責任で行うという認識が根強かったが、この事故を機に警察庁が全国の警察署に雑踏警備実施の「主任者」を置くよう指示するなど、国内の雑踏警備の転換点となった。
手引きは、兵庫県警が事故翌年の02年12月に作成。「雑踏の脅威」や「警備の計画から実施まで」など6章構成で120ページあり、ホームページ(HP)で公開している。
手引きでは、群集は、停止させられた状態が長くなるほどいらだちの心理が働き、強大な力を発揮すると指摘。歩道橋上で3方向からの押し合う力が「群集雪崩」を起こした明石の事例を基に、人の流れをぶつからせないことが重要だとして、警備員が人垣を作って誘導したり、ロープで区切ったりして一方通行にするのが大原則としている。群集密度を減らすため、入り口で入場を制限する方法なども挙げている。
兵庫県警によると、10月のHPの閲覧回数は月平均の約170回を大幅に上回り、4万3367回に跳ね上がった。ほとんどは梨泰院の雑踏事故が起きた10月29日から31日までの3日間に集中したとみられる。
梨泰院の事故では、警備要員を現場に派遣していないなど、現地警察の対応が不十分だったことが明らかになっている。ツイッターでは手引きについて、「梨泰院の事故がいかに悪条件だったかがわかる」「翻訳して世界に広めて」との書き込みが相次いでいる。
県警雑踏警備対策室の担当者は「手引きには、『二度と事故を起こしてはいけない』という警察官たちの思いが詰まっている。ソウルの事故を機に閲覧数が伸びているのは複雑な気持ちだが、被害の防止に役立ててもらえたら」と話す。