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 2022年10月25日午前11時ごろに、建設中の川崎市新本庁舎で発生した火災。市の発表によると、地上24階の天井裏に設置してあった断熱材から出火した疑いがある。発災当時、24階には10人の作業員がいたが、負傷者などはいなかった。施工者の大成建設は日経クロステックの取材に「再発防止策を作成し、火気使用について作業員一人ひとりに指導を徹底する」などと回答した。

建設中の川崎市新本庁舎は川崎市川崎区宮本町に位置する。発災当時、火元の24階では内装工事を進めていた。2022年10月27日撮影(写真:日経クロステック)
建設中の川崎市新本庁舎は川崎市川崎区宮本町に位置する。発災当時、火元の24階では内装工事を進めていた。2022年10月27日撮影(写真:日経クロステック)
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 新本庁舎は、旧庁舎の老朽化などを背景に市が建設を進めてきた。地下2階・地上25階建ての超高層ビルで、最高高さ116.97m、延べ面積6万2356.11m2だ。構造は鉄骨造など。設計・監理は久米設計(東京・江東)が担当している。

 川崎市総務企画局本庁舎等整備推進室によると、現場から約700m離れた場所にある同市消防局川崎消防署の職員が、現場から黒煙が立ち上るのを午前11時7分ごろに確認した。消防隊は午前11時13分には現場に到着し、午後1時前に鎮火を確認した。

 火元と疑われる断熱材は、24階天井のフラットデッキ上に設置してあったポリスチレンフォーム。フラットデッキとは、床やスラブのコンクリートを打設する際に使用する鋼製の仮設型枠材だ。

 発災当時、24階では内装工事を実施していた。デッキのリブが間仕切り壁の設置作業などの支障になるため、作業員がバーナーで切り取る作業を進めていたという。その際に断熱材に引火し、火災が発生した疑いがある。

火元とみられる箇所の断面図。赤線で示したのがフラットデッキ。リブに加え、平らな鋼板部分も含めて切断する予定だった。24階と25階の間には設備配管や換気のための空間を設け、二重スラブとしている(出所:川崎市)
火元とみられる箇所の断面図。赤線で示したのがフラットデッキ。リブに加え、平らな鋼板部分も含めて切断する予定だった。24階と25階の間には設備配管や換気のための空間を設け、二重スラブとしている(出所:川崎市)
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 市本庁舎等整備推進室の岸田謙三担当課長は、「作業員が断熱材の存在を知らなかった可能性がある」と話す。同推進室の畑透担当課長は「施工図や設計図書でどこまで細かく作業を指示していたか、確認中だ。バーナーを使う作業はほかにもある。原因調査と再発防止策の作成を急ぎたい」と状況を説明する。