住宅被害の全容把握進まず 県の初動対応に批判も 台風15号 

 台風15号の住宅被害の把握が千葉県内で思うように進んでいない。19日時点の県の発表で被害総数は9720棟となったが、この中には館山市と睦沢町がなお含まれていない。同日の発表で被害数が一気に増えた鋸南町を含め、建物被害が大きいとみられる県南部の市町では調査に当たる職員が不足しており、人員派遣が遅れた県の対応を批判する声も上がっている。

 「被災者への対応に追われて、県の災害情報システムに被害内容を入力する時間はとてもなかった」。17日に194棟の住宅被害を報告した香取市の担当者はこう明かす。同市の住宅被害の報告はこの前日まで1棟にとどまっていた。

 こうした市町村側の窮状は容易に推察できたが、県が被災状況などを確認するため市町村に職員を派遣したのは台風直撃4日目の12日になってから。大きな被害が想定される南房総市は16日まで住宅被害の表示が0棟で、10~11日は一時、市役所と電話がつながらなくなったにもかかわらず、県が12日より前に職員を派遣することはなかった。

 香取市の担当者は「国の職員は10日か11日には来ていたのに県の職員が来たのは13日になってからだ」と県の対応の遅さを批判。16日に1124棟の住宅被害を報告した富津市の担当者も「なかなか被害報告ができなかったが、県からは特に問い合わせもなかった」と証言する。

 県の災害時対応マニュアルには「大規模災害が発生した場合、特に市町村が被災状況の報告を行うことができなくなった場合には積極的に市町村へ県職員を派遣し、情報収集を行う」と明記されているが、守られていなかった形だ。

 県には22市町から職員の応援要請があり、18日までに延べ577人を派遣。特に要望が多いのは、家屋の被害状況を見て回る人員だという。

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