話の肖像画

ぐるなび会長・滝久雄(2)駅にビジネスチャンス見つける

 〈ぐるなびの前に、三菱金属(現三菱マテリアル)でのサラリーマン経験がある。東京工業大理工学部を卒業した昭和38年に入社、大井町工場で、金属加工の技術研究を任された〉

 自動車工業の興隆期、仕事は次々にやってきてやりがいはありましたよ。その一方で、「自分にしかできないことがあるのではないか」との思いも湧いてきましてね。

 というのもNKBの前身、交通文化事業社を作ったおやじ(滝冨士太郎氏)に、小林一三氏(阪急阪神東宝グループ創業者)や五島慶太氏(東急電鉄元社長)らの話を聞いて育ったから「男なら起業家を目指すべきだ」との価値観があったんです。個人では難しいだろうと考えながらも、日に日に思いは募る。4年目にドイツ留学の話が出たんです。これを受けたら会社から離れられなくなると、退社を決意しました。親や学校の恩師には「優良企業を飛び出すなんて、どうかしている!」と猛反対され、上司には「戦後、大卒入社で辞めるのはお前が初めてだ」とあきれられた。「ベンチャー」なんて言葉、なかった時代ですからね。

 〈退社後半年間、英語を勉強したり、渡航経験のある約100人を訪ねたりして予習し、昭和42年、米国へ向かう。先進国を見たいとの思いだった〉

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