米運輸省、トヨタの電子制御で暫定「シロ判定」
トヨタ自動車の米リコール(回収・無償修理)問題で米運輸省は10日、中間調査結果を発表、焦点の電子制御システムの欠陥について暫定的な「シロ判定」を下した。一時過熱した米メディアの「トヨタたたき」も沈静化の兆しがあり、今後は販売や集団訴訟への影響に注目が集まる。ただ最終調査結果が出そろうのは来年にずれこむ可能性もあり、中長期的な動向には不透明さが残る。
米運輸省は10日、今春の調査開始以来初めて、具体的な調査内容を公表した。消費者が「意図しない急加速」を訴えた58件の調査では、電子制御システムの欠陥は見つからなかった。半数以上でブレーキが踏まれておらず、運転者がブレーキと間違えてアクセルを踏み込み「急加速」と感じた可能性がある。
米運輸省は外部機関に依頼し調査を続ける。米航空宇宙局(NASA)の調査は早ければ8~9月に結果が出る一方、米科学アカデミー(NAS)の調査は来春以降にずれ込む見通しだ。
米国では1980年代にも独アウディの車で急加速の訴えが相次ぎ、同社は激しい非難を受けた。米当局は最終的に「車の欠陥ではなく運転ミスが原因」との調査結果を報告。しかし実際に販売が上向くまでには長い時間を要した。
トヨタの先月の米新車販売は前年同月比3%減と他社より苦戦が続く。ただ、販売台数のうち他社の車に乗っていた人がトヨタ車に乗り換えた比率は57%と「リコール問題以降、初めて5割を回復した」(同社幹部)。品質不安が和らいだとみられ、問題は沈静化の兆しも見せる。
米メディアの論調もトヨタ批判一辺倒ではなくなってきた。米経済誌フォーブスは7月末、運転ミスの可能性を検証せずトヨタ車の危険性をあおったメディアの報道姿勢を批判する記事を掲載した。利用者から高速道路交通安全局(NHTSA)に寄せられた事故報告について、内容を検証したのかを疑問視した。
(ニューヨーク=小高航)