米、アフガン政府の資産凍結 タリバンへの資金遮断

アフガニスタンの首都カブールのタリバン兵=19日(AP)
アフガニスタンの首都カブールのタリバン兵=19日(AP)

【ワシントン=塩原永久】バイデン米政権が、アフガニスタンで実権を掌握したイスラム原理主義勢力タリバンへの資金流入の阻止に動いている。崩壊したガニ政権が米国に保有する資産を米政府が凍結したとされ、資金がタリバンに流用されるのを防ぐ一方、実質的な金融制裁としてタリバンに圧力をかける狙いもあるとみられる。タリバンが資金不足に陥れば政権運営への大きな障害となる。

「タリバンは軍事的に勝利したが、今度は(国を)統治しなければならない。それは容易ではない」

アフガニスタン中央銀行のアフマディ総裁代行は20日までに、自身のツイッターでこう指摘した。

同中銀の保有資産は先週時点で90億ドル(約9900億円)程度だが、現金残高は「ほぼゼロ」だと明らかにした。従来は数週間ごとにドル紙幣が輸送されていたが、治安悪化で輸送が停止されたためだという。

アフガン中銀の資産の多くは米欧の金融機関に準備資産としておかれている。米紙ワシントン・ポストによると、米財務省が米国内のアフガン政府資産を15日に凍結。高官は「タリバンに使われることはない」と指摘した。国外に逃れたアフマディ氏は、残った資産でタリバンが利用できるのは「0・1~0・2%(約10億~20億円)」とみる。

国際通貨基金(IMF)は18日、対外的な外貨支払いの準備不足に備える特別引き出し権(SDR)を含むアフガン支援の停止を発表したが、米メディアによると米財務省が停止を働きかけていた。アフガンは4億5千万ドル超の配分を受ける予定だったが、米議会でテロリストを支援したタリバンへの反発が根強く、多数の議員が支援停止をイエレン財務長官に求める連名書簡を送っていた。

また、ガニ政権期には国家予算の8割を米国など海外からの支援が占めた。

こうしたタリバンへの資金遮断は、実質的に金融制裁と同等の効果を持つことになり、極端なイスラム統治が懸念されるタリバンに対して、国際社会との融和を促す圧力になるとも指摘される。

トランプ前政権で高官だったリサ・カーティス新アメリカ安全保障センター研究員は、「米国は友好国と連携しながら、こうした道具を活用しなければならない」と指摘。一方で、資金途絶の打撃を受けるアフガンの一般市民に対しては「人道支援を続ける必要がある」と話す。

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