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熊本産アサリ偽装 根絶と信頼回復の機会に

 影響は他の農水産品にも及びかねない。とりわけ熊本県は、蒲島郁夫知事が緊急記者会見で訴えたように「熊本ブランド」の信頼を揺るがす危機的な状況である。

 中国や韓国から輸入したアサリを「熊本県産」として販売する不正が全国で横行していた。農林水産省の調査で判明した。

 産地の偽装は消費者を欺く行為である。特に熊本県産に関しては、近年の熊本地震や熊本豪雨の被災地を応援しようと手にした人もいただろう。そうした気持ちを踏みにじったという意味でも許せない不正だ。

 農水産物は一般に「国産」の評判が高く、アサリは「熊本県産」が最も人気なのだろう。

 調査結果に驚くばかりだ。昨年10~12月に全国の小売店約千店で販売されたアサリ約3138トンのうち約8割が「熊本県産」とされていた。熊本県の2020年のアサリ漁獲量は21トンにすぎず、100年分以上のアサリが出回っている計算だ。

 国産のアサリ全体が減少し、今や国内で流通する9割近くが外国産である。農水省が国内各地のアサリ50点を購入しDNA分析したところ、「熊本県産」とされていた31点のうち30点から外国産アサリのDNAを検出したという。

 輸入したアサリも国内で長く蓄養すれば国産扱いできる。このため農水省は「外国産が混入している可能性が高い」との表現にとどめたが、実態は輸入アサリを熊本県産と偽り販売したケースが大半とみられる。

 実際、中国産や韓国産のアサリを有明海の干潟にまき、短期間で回収して熊本県産として出荷してきたとの証言がある。テレビの報道番組でも大掛かりな偽装作業の映像が流れた。

 もっと悪質な手口もある。農水省によると、15年以降に食品表示法に基づき指示・公表した外国産アサリの産地偽装8件のうち蓄養が確認できたのは1件で、多くは蓄養することもなく「熊本県産」に変えていた。

 今回の偽装は以前から地元や多くの関係者が認識していた悪弊との指摘がある。熊本県にも苦情が届いている。知事の要請を受け、熊本県漁業協同組合連合会は生鮮アサリの出荷を約2カ月間停止する。不正をあぶり出すためだ。この機会に偽装を根絶し、熊本ブランドの信頼回復に取り組むべきである。

 農水産品全般の原産地表示ルールの見直しも課題となろう。私たち消費者も、過度な国産偏重の消費行動は改めたい。

 他方、1977年に全国の4割に当たる6万5千トンあった熊本県のアサリ漁獲量が激減した事実も見過ごせない。原因を探り対策を考えることも大切だ。

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