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リオネル・メッシのチャリティ活動。「世界の子どもたちの笑顔がサッカー選手としての原動力」【ワールドカップ2022】

「これが最後のW杯」──そう明言した2022年FIFAワールドカップ、アルゼンチン代表のFWリオネル・メッシ35歳。18日に行われたフランスとの決勝戦で激戦を繰り広げ、悲願の優勝を果たした。メッシは2得点で有終の美を飾り、大会MVPにあたるゴールデンボールにも輝いた。そんなメッシは、2007年に自身の財団を設立して以来、世界各地で暮らす子どもたちへの支援に心血を注いできた。「歴代の史上最高選手」と称される真の所以を探る。
DOHA QATAR  NOVEMBER 19 Lionel Messi of Argentina poses during the official FIFA World Cup Qatar 2022 portrait session...
DOHA, QATAR - NOVEMBER 19: Lionel Messi of Argentina poses during the official FIFA World Cup Qatar 2022 portrait session on November 19, 2022 in Doha, Qatar. (Photo by David Ramos - FIFA/FIFA via Getty Images)Photo: David Ramos - FIFA / Getty Images

バロンドールを7回、ゴールデンシュー6回受賞

2022年12月18日、FIFAワールドカップ悲願の優勝に輝いたアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ。Photo: Marvin Ibo Guengoer - GES Sportfoto / Getty Images

パリ・サンジェルマン(PSG)のアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ。現在35歳のメッシは、カタール杯が5度目の大舞台となると同時に、今月6日にアルゼンチンメディアの取材に対して「これが最後になる」と、自身ラストのワールドカップ出場であることを明言していた。それだけに、世界王者の称号を得る最後のチャンスに挑むメッシの意気込みは並々ならぬものであり、過去最高潮を迎えるファンからの期待に応えるかのように、世界一に大手をかけた。

18日に行われたフランスとの決勝戦でメッシは2得点をあげ、予てから得点王争いが注目されていたフランスのキリアン・エムバペがハットトリックを果たすも、3対3でPK戦までもつれこんだ。そして、激戦の末にアルゼンチンは世界王者に輝いた。また、大会2度目となるゴールデンボール賞にも輝いた。自身のインスタグラムを通して、メッシは感謝の言葉を綴った。

「世界王者!!!! 何度夢見たことだろうか。今でも信じられない。家族、応援してくれる人たち、そして信じてくれた人たちに感謝します。アルゼンチン人は、共に戦い、団結すれば、どんなことでも成し遂げられるということを改めて示したのです。それは、すべてのアルゼンチン人の夢でもあった、同じ夢のために戦うみんなの力なのです」

これまで、世界最優秀選手に贈られるバロンドールを歴代最多の7度受賞し、欧州最多得点者に贈られるゴールデンシューを歴代最多の6度獲得するなど、偉大なる功績を残し続けてきたメッシ。一方で、子どもたちの支援をはじめとする熱心な慈善活動家としても有名だ。

世界の子どもたちのために、レオ・メッシ財団を設立

FIFAワールドカップ2022のトロフィーに口づけするメッシ。Photo: Marc Atkins / Getty Images

2007年に自身の名前を冠したレオ・メッシ財団を設立し、子どもたちへ教育や保健福祉の支援を行ってきた。彼自身、子どもの頃に下垂体性の成長ホルモン分泌不全症と診断され、13歳でアルゼンチンからスペインへ移ると同時に、月間900ドル(約12万)の成長ホルモンの治療を受け、その費用をFCバルセロナが負担したことでも知られる。夢を実現するために支えてもらった過去の経験が、今の財団の活動のルーツにもなっているといえるだろう。創設の経緯について、財団HPにこう綴っている。

「世界的なサッカー選手になるまでに、言葉では表現できないほどの困難を乗り越えてきました。その努力と成果から得られたものを、支援が必要な子どもたちへと還元したい。なぜなら、子どもたちの笑顔に私は心を動かされ、彼らの瞳には希望があり、喜びに満ち溢れているからです。それこそが、サッカー選手としての原動力にもなっています」

小児がんの医療施設や研究費への資金提供

コパ・アメリカ2021で決勝のアルゼンチン代表対ブラジル代表戦が2021年7月10日に行われ、1-0の勝利を収めたアルゼンチンが優勝を飾った。メッシは得点王&MVPに輝いた。Photo: Alexandre Schneider / Getty Images

15年以上にも及ぶ財団の活動を通じて、小児がんの治療ができる医療施設の建設費や研究費への資金提供に長年取り組んできた。2018年にはFCバルセロナとともに3億円以上を病院建設プロジェクトに寄付し、今年9月にバルセロナ初の国立がん研究センターがオープンした。「計画の一部に貢献出来る事は自分自身にとって栄誉なことです。今後も、がんと戦う子どもたちを助ける活動をしていきたい」と語っている。ほかにも3000人分のC型肝炎治療薬を寄付するなど、医療格差等によって治療の機会を得られない人々への支援を続けてきた。

また、2010年からユニセフの親善大使を務めるメッシは、就任後すぐにシリアの子どもたち5万人へ教材を送ったほか、2017年にはプレハブ式の学校20校を建設するなど、長期的な支援を続ける。現在も続く内戦により、シリアでは約245万人の子どもが今もなお学校に通うことができていないという。

気候変動や自然災害に苦しむ地域への給食支援

さらに、昨今の気候変動により、サイクロン、干ばつ、洪水など自然災害の影響を大きく受ける東アフリカ・モザンビークでは、子どもたちが貧困や飢餓などによる深刻な影響を受けている。そのため、メッシは栄養バランスの整った学校給食を提供すべく40万ドル(約5600万円)を支援団体に寄付した。そのほかにも、政情不安や自然災害に悩まされてきたハイチやネパールの子どもたちの命を救うべく行ってきた数々のチャリティ活動は数え切れないほどだ。

「世界には病気の子どもたちがたくさんいます。それに、多くの子どもたちが教育を受けられなかったり、栄養不良の状態にあります。ユニセフとともに、私ができることはなんでもやるつもりです」と親善大使任命式で語った通り、10年経った今も子どもたちへの支援を惜しまない。

自身の足のオブジェを販売、収益を東日本大震災の復興支援に

東日本大震災の際には、メッシの左足をかたどった25キログラムの純金の実物大オブジェ「ザ・ゴールデンフット」を発売し、その収益の一部を財団を通して被災地へ寄付。さらに2014年には岩手県沿岸部の子どもたちをバルセロナに招待したことも、日本で大いに話題となった。

一方、スペシャルオリンピックスとコラボレーションし、スペインのカタルーニャ地方で暮らす障がいのある子どもたちがスポーツに参加できるようなプログラムを提供するなど、インクルーシブな地域コミュニティづくりにも心血を注ぐ。

最近では、2020年3月に世界がパンデミックに陥り各国で医療崩壊が起こる中、コロナ対策として100万ユーロ(約1億2000万円)をバルセロナと母国アルゼンチンの病院に寄付したことも記憶に新しい。

サッカー界における歴史的な活躍だけでなく、世界各地で起きている危機に目を向け、人々を啓蒙する影響力と確かな実行力は、メッシを「歴代の史上最高選手」と称する確たる所以のひとつだろう。

Text: Mina Oba