DeNA育成ドラフト4位・渡辺明貴投手(22)=BC茨城=が18日、茨城・ひたちなか市内のホテルで入団交渉に臨み、支度金280万円、年俸340万円で合意。背番号は「106」に決まった。
異色の経歴の持ち主だ。山梨県出身、父が監督を務める笛吹ボーイズから静岡県内の高校に進学するも、環境になじめず数カ月で野球部を退部。高校も中退し牛丼チェーン「すき家」、ホテル、ヤマト運輸とアルバイトを転々とした。
それでも、2015年に通信制の第一学院高に入学し、クラブチーム「山梨球友クラブ」で野球を再開。トライアウトを経てBC滋賀に入団し、同リーグ初の高校生独立リーガーとなった。BC新潟でもプレーしたが、プロ入りはかなわず、19年に再び野球をあきらめた。
しかし、知人に紹介されて今度は韓国の独立リーグで野球を再開。収入はインセンティブ数万円のみの厳しい環境に身を置き、元DeNA・風張らも経験した米国でマイナーチームと試合などを行う「アジアン・ブリーズ」にも参加した。「もちろん通訳もつけていないので、言葉も通じないし、食べ物も合わない。しんどかったですね。日本っていい国だなって思いました」と苦労を振り返った。
昨季からBC茨城に加入。最速152キロの直球に、スライダー・フォークと変化球も成長し、リーグ2位の45試合に登板。リリーバーとしてタフネスぶりも発揮し、念願のNPB切符をつかんだ。
「高校を辞めて、クラブチームに入ってというのは僕だけではない。辞めなければいつかこういう舞台に立てるというのを見せることができたのはよかった」
〝王道〟だけが、プロ野球じゃない。2度のリタイアを乗り越えた超苦労人が、その姿で多くの野球人に夢を与える。