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ほどよくスポーティ──新型スバル・インプレッサスポーツSTI Sport試乗記

スバルのハッチバック「インプレッサスポーツ」に、新グレード「STI Sport」が追加された。スバルのモータースポーツ部門の「STI(SUBARU TECNICA INTERNATIONAL INC.)」が手がけたスポーツグレードのデキは?
subaru impreza sti sport スバル インプレッサスポーツ ハッチバック
Hiromitsu Yasui
subaru impreza sti sport スバル インプレッサスポーツ ハッチバック
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普段の運転でも違いがわかる!?

2020年10月に発売されたインプレッサスポーツSTI Sportは、手頃な価格で実用性と機能性をあわせもったクルマが欲しい、というひとにうってつけだ。「WRX STI」などで知られるSTI(SUBARU TECNICA INTERNATIONAL INC.)が手がけた足まわりを持つ。それだけで「クルマってこんなに楽しくなるんだぁ」と、感心する出来なのだ。

インプレッサスポーツは、車型としては、スバル車のラインナップでもっともベーシックな乗用車で、全長4.4mほどの5ドアハッチバックだ。室内は4人で乗るのにちょうどよいパッケージで、要するに機能優先で作られたモデルである。

【主要諸元】全長×全幅×全高:4475×1775×1480mm、ホイールベース2670mm、車両重量1350kg、乗車定員5名、エンジン1995cc水平対向4気筒DOHC(154ps/6000rpm、196Nm/4000rpm)、トランスミッションCVT、駆動方式4WD、タイヤ225/40R18、価格270万6000円(OP含まず)。

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18インチアルミホイールは専用のダークメタリック塗装。

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スバルが、“最高の安心と愉しさ”を提供するとしているインプレッサスポーツ。今回のSTI Sportは、WRX STIなどウルトラスポーティなスバル車の開発を手がけるSTIチューニングを担当したフロントサスペンションなどを特徴とする。

インプレッサスポーツには、1.6リッター水平対向4気筒、2.0リッター水平対向4気筒、2.0リッターエンジンにモーターを組み合わせたマイルド・ハイブリッドと、パワートレインが豊富だ。STI Sportは、1995cc水平対向4気筒直噴ガソリンエンジンを搭載している。「普段の運転でもクルマを操る愉しさを存分に感じることのできる最上級モデル」(プレスリリースより)とするのが、STI Sportのいいトコロだ。

STIはSUBARU TECNICA INTERNATIONAL INC.の略称。スバルのモータースポーツ部門を担うほか、ロードカーのチューニングを手がける。

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ブラック塗装のルーフスポイラーは専用装備。

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フロントに採用されたのは、SHOWA製メカ式減衰力可変ダンパー。複筒式で、かつメインのチューブのオイルの流量が2系統となっているのが構造上の特徴である。メリットは、ダンパーのピストンスピード(つまり車速)に応じて適切なダンピング(つまり乗り心地)が得られるところ。一般的にいうと、低速では快適に、高速ではしっかり、となる。

多くの人にSTIの魅力を

じっさい走らせると、STI Sportならではの楽しさをしっかり感じられる。113kW(154ps)の最高出力と、196Nmの最大トルクというエンジン性能は、数値からすると、そうたいしたことない。でも、変速機の制御などがうまい。

フロントダンパーはSTIがチューニングしたSHOWA製ダンパーに換装されている。路面から伝わる振動の周波数(低周波領域/高周波領域)に応じて減衰力を自動調整するという。

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搭載するエンジンは1995cc水平対向4気筒DOHC(154ps/6000rpm、196Nm/4000rpm)。

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スバルの電子制御技術が盛り込まれた無段変速機「リニアトロニック」は、ドライバーが”加速したい”と思ったら、アクセルペダルの踏みこみですぐにその気持ちに応じて、エンジンの回転数をじょうずに使ってくれる。なので、もたもたしたかんじはない。

くわえて、ダンパーの効果で、ステアリング・ホイール操作への車体の反応は速く、意外なほどキビキビ感のある操縦ができるのだ。

リアのダンパーも専用チューニングが施された。コーナーでは、外側がしっかりと踏ん張り、内側はスッと伸びてタイヤが路面をしなやかに捉えることで姿勢を安定させるという。

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搭載するトランスミッションはCVT。

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ペダル類はアルミパッド付き。

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試乗の現場で、スバルテクニカインターナショナル社で開発副本部長を務める高津益夫さんは「もっとも重視したのは旋回時の内輪の接地荷重の確保です。今回の新しいダンパー採用によって、内輪の駆動力を確保できるので、より速いコーナリングが可能になっています」と、述べる。

フロントダンパーをうまく調節するだけで、キャラクターがけっこう変わる。ここがクルマのおもしろさだなぁと、感心した。先述したとおり、室内スペースに余裕があるし、嫌みのないスタイリングだし、インプレッサスポーツSTI Sportは、長く付き合えそうだ。毎日の足にもぴったりだろう。

メーターはSTIのロゴが入った専用デザイン。

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インパネまわりは専用のブラック加飾付き。

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ステアリング・ホイールはレッドステッチ入り。

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「STI Sportの設定意図は、STIの魅力をエントリーモデルから知ってもらいたいと考えたからです」とは高津さん。知っているひとは、知りすぎるほど知っているブランドであるSTIとはいえ、一般的な知名度はまだまだだそう。

豊富な専用装備

インプレッサスポーツSTI Sportは、2.0i-Lアイサイト(224万4000円)より46万2000円高い。STI Sport専用装備として、上記ダンパーにくわえ、ダークメタリック塗装の18インチアルミホイール、レッドステッチ入りの本革巻きステアリング・ホイール、ブラックのアウトサイドミラー、ブラックを多用したダッシュボードの仕上げに専用メーター、レッドステッチの入った専用シートなどだ。

前輪駆動モデルの価格は270万6000円。もうひとつ、AWD(4WD)が292万6000円で用意される。前輪駆動仕様が50kg軽いいっぽう、後輪への荷重を含め前後の重量バランスでは、AWDに利があるようだ(未体験)。

インパネ上部にはフルカラーのマルチインフォメーションディスプレイ付き。

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シートはレッドステッチ入り。フロントは8Way電動調整式だ。

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フロント&リアドアアームレストもレッドステッチ入り。

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通常時のラゲッジルーム容量は385リッター。

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ラゲッジルームのフロア下には小物入れがある。

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リアシートのバックッレストは40:60の分割可倒式。

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この価格帯には、モーターをうまく使ってパワー感が出ているマイルドハイブリッドのマツダ「MX-30」(242万円〜)や、エンジンを回して走ると楽しく走行支援装備も豊富になった新型ルノー「ルーテシア」(236万9000円〜)など、魅力的なモデルが増えてきている。

親しみやすい価格帯に選択肢が増えるのは、クルマ好きには嬉しい。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)