ふわふわ、くるくる「名古屋巻き」　不況に負けず進化中

　名古屋嬢の髪形と言えば、大きく内巻きにした巻き髪。名古屋巻きと呼ばれ、０５年の愛知万博で一気に盛り上がった名古屋ブームに乗り、女性誌などで話題になった。好景気に沸いた東海経済、「元気なナゴヤ」の象徴でもあった名古屋嬢のヘアスタイルは今、どうなったのか。

　ストレートのロングヘアがカールアイロンで巻かれて、毛先がみるみるうちにゆるやかなカーブを描き、エアリーなふんわり感に仕上がっていく。若い女性に人気のヘアサロン「ＬＡＤＯＮＮＡ（ラドンナ）」（名古屋・栄）では女性客のオーダーの８割が巻き髪だ。「巻き髪はワンピースに合うし、パンツスタイルでもかわいく見えるので好き」と客の女子大生（１９）。

　西尾正義店長は「以前は名古屋巻きイコールエレガント。今はフェミニン、キュート、クールなど様々な形が出てきてひとくくりにできません。それに、名古屋巻きという呼び名も私たちの間では今は使いませんね」。東海エリアのファッション情報誌「東海スパイガール」のヘア特集でも巻き髪は欠かせない。編集部の角屋昌也さんは「名古屋の女の子は『かわいく見せる』が基本なので、巻き髪は根強い人気があります」。

　名古屋巻きは、愛知県出身の美容家、土屋雅之さんが００年ごろに考案。女性誌「ＪＪ」で紹介され、全国にも広がったとされている。レイヤーを入れて軽さを出した髪に太めのカーラーで巻いて曲線美を前面に出したのが特徴だった。

　現在は東京のサロン「ＢＬＡＮＣＯ南青山」に勤める土屋さんは「エレガントな関西とラフでカジュアルな関東の両方の洋服を着こなしたいという声が多く、それに合う髪形を考えた結果。自分で簡単にできるので、女の子の間で話題になりました」。

　「名古屋嬢ライフ」などの著書のある美容評論家、世木みやびさんは「名古屋巻きが注目された５、６年前、髪を巻いている女性の数は、東京や大阪に比べて名古屋が圧倒的に多かったと思います。今やすっかり定着して、名古屋文化の一つと言えるのではないでしょうか」。

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　名古屋巻きといえば、６年ほど前はくるくるに巻いていたが、現在はゆるく巻いて下にボリュームを持っていくのが定番になっている。

　さらには、あっと驚く独自のアレンジが名古屋で誕生している。派手メーク満載の女性誌「なごや嬢　ＰｉｎＤｏｍ」。昨年１２月に地元の出版社ハセオエンターテーメントが東海地区限定でムック本として発売。キラキラファッションで若者の心をつかんだ全国誌「小悪魔ａｇｅｈａ」の東海版だ。女性たちに好評で、今月号から月刊化する。　新刊号では名古屋名物のスイーツをイメージした巻き髪が紹介されている。

　例えば、コメダ珈琲（コーヒー）店の人気スイーツを模した「シロノワールＡライン」は、お姫様のように大きく波打つ長い髪が特徴だ。まるでデニッシュの上に乗ったソフトクリームのよう。ラーメンチェーン店「スガキヤ」の「チョコクリームスジ」は頭の上に盛った髪に筋を何本も入れて、ソフトクリームにかけたチョコレートが流れる様を表現した。

　考えたのは編集長の相川イオさん（１７）ら。相川さんは名古屋市の高校２年生。出版社側が、１０代後半から２０代前半の読者層のニーズと感性をすくい上げることを目的に起用した。相川さんは「名古屋の女の子は地元に対する愛着が強いので、名古屋ならではの髪形を提案しようと思った。華やかさで不景気を吹き飛ばしたい」と張り切る。

　名古屋嬢の巻き髪は今後も続くのか。美容評論家の世木さんは「親との同居率が高い名古屋では、上品な巻き髪は親も公認したので浸透しました。自分で巻くことができるので、美容室代が浮く。堅実な土地柄にぴったり。アレンジを加えながら、巻き髪は生き残っていくでしょう」とみている。（小林裕子）