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駅のプラットホームで列車の発車や接近を知らせる「駅メロディー(駅メロ)」。実はモーツァルトが作曲の手本だったり、交響楽団が演奏する楽曲が流れたりする駅もある。駅メロとクラシック音楽との深い関係を調べてみた。(デジタル編集部 谷口愛佳、長野浩一)
JRの東京駅中央線のホームに響く「タラララランラン……」というチェンバロ風の音色のメロディー。総武線、山手線などの駅でも多く使われている「JR-SH2」という曲だ。生みの親は、作・編曲家の塩塚博さん(65)。「モーツァルトを意識して作ったのですよ」と明かす。
JR―SH2を含めて9種類ある「JR-SHシリーズ」は、主にJR東日本管内の駅で使われていて、SHは塩塚さんのイニシャルだ。約200曲の駅メロを作ってきた塩塚さんは「毎日のように耳にするから飽きられてはいけない。気持ちよくてさわやかな音色とし、くどくならないように音数を少なくしている」と説明する。
手本にしたのがモーツァルトだ。「口ずさみやすくて、親しみやすくて、明るい。そして品がある」と評し、「現代によみがえったモーツァルトになったつもりで作曲している。それを10秒にまとめると駅メロディーになった」と語る。ギタリストでもある塩塚さんだが、メロディーの半数は「楽器を持たずに鼻歌で作った」という。「平易で口ずさみやすく、親しみやすいメロディーを作るには有効だから」。
塩塚さんの著書「駅メロ!THE BEST」(扶桑社)によると、駅メロが本格的に作られるようになったのは、1987年の国鉄の分割・民営化以降。従来はせき立てるような音の「発車ベル」が使われてきたが、顧客サービス向上の一環で導入が進んだのだという。さらに1990年代後半からは「蒲田行進曲」(JR蒲田駅)など、その地域にゆかりがある「ご当地駅メロ」が広がったそうだ。
SHシリーズは1994年から今なお使われており、「駅メロ」におけるクラシック的な存在となっている。塩塚さんは「誰が作ったのかは語られることはなくても、メロディーを空気のように感じて、気持ちよく電車を乗り降りしてもらえたなら作曲家として本望」と話している。
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