計量単位のSI化に係るQ&A
SI単位等普及推進委員会
通商産業省 計量行政室
1.計量単位の表示について
 (1)参考値について
Q1 取引又は証明において、非法定計量単位を用いることはできるか。
A1 計量法第8条によって、非法定計量単位を取引又は証明に用いることはできません。しかしながら、法定計量単位を表記したうえで、非法定計量単位を参考値として付すことは可能です。
Q2 参考値の表示方法に決まりはあるのか。
A2 参考値であることが分かれば結構です。たとえば、下記のような表記であれば、問題はありません。また、括弧以外でも参考値であることが分かれば、問題ありません。
    200 N(20 kgf)、2 MPa{20 kgf/cm2
※注:換算の方法は実状に応じた値を設定
Q3 参考値が使用できる期限はあるのか。
A3 参考値を付すことに期限は定められていません。

 (2)単位記号について
Q4 標準状態の体積を表すのにノーマルのNを使用したNm3を使用できるか。
A4 SIのルールでは、記号Nm3はニュートン立方メートルを表しますので、誤解を生む要因となります。したがって、正しい表記をすべきです。以下に、推奨する表記の例を示します。

       VNormal = ○○ m3 、VN = ○○ m3
   又は、 m3(Normal)、m3(N)、m3(標準状態)

なお、計量法は、計量単位記号については、あくまでも標準となるべきものを定めていますので、Nm3の使用に対しては罰則の適用はありません。

Q5 接頭語のキロに大文字のKを使用することは可能か。
A5 SIのルールでは、大文字のKは温度の計量単位であるケルビン(K)を表す記号ですので、誤解を生む要因となります。したがって、正しく小文字のkを使用すべきです。特に、欧州やISOなどでは、記号も含めて整合性を求められますので、正しい記号を使用することをお薦めします。
 なお、計量法は、計量単位記号については、標準となるべきものを定めていますので、大文字のKを用いることに罰則が伴うものではありません。
Q6 温度の計量単位である度(℃)に記号として、「deg」などの使用が可能か。
A6 A5の回答と同様に正しく、℃と表記することをお薦めします。
Q7 単位記号に添え字を付けること(例えば、絶対圧力を表示するPaAなどの表記)は許されるのか。
A7 ISOやJISが定める記号の使い方のルールでは、添え字を使用することは許されていません。なお、計量法ではこういったことまで規制していませんが、単位の分かり易さ、共通の単位(単位記号も含めて)を使用していくことのメリットを考えると、正しい単位記号を使用すべきです。

 (3)計量単位について
Q8 圧力の計量単位に「バール(bar)」を使用することは可能か。
A8 猶予期限後の圧力の計量単位は「新計量法とSI化の進め方」のp.8〜p.10に示しているものが法定計量単位となります。つまり、パスカル(Pa)、ニュートン毎平方メートル(N/m2)、バール(bar)、気圧(atm)、そしてそれぞれの単位に10の整数乗倍を表す接頭語を組み合わせたものが用途を限定せずに使用できる圧力の法定計量単位となります。したがって、「バール(bar)」は使用可能です。
Q9 応力の計量単位に「ニュートン毎平方ミリメートル(N/mm2)」は使用可能か。
A9 応力の法定計量単位は、パスカル(Pa)、ニュートン毎平方メートル(N/m2)、そしてそれぞれの単位に10の整数乗倍を表す接頭語を組み合わせたものが使用可能です。したがって、「ニュートン毎平方ミリメートル(N/mm2)」は使用可能です。
Q10 時間の単位として、年、月、日の使用は可能か。
A10 計量法で規定する物象の状態の量としての時間は、あくまでも物理的に定義できる時間を規定しています。年、月、日は目安量としての時間を表すものであり、計量法で規制するものではありません。したがって、取引又は証明においても、年、月、日を使用することは可能です。
Q11 計量法で規定していない物象の状態の量の計量単位については、どのように対処すればよいのか。
A11 計量法は、計量法で規定する72の物象の状態の量の計量単位について規制しています。したがって、計量法で規定していない物象の状態の量について、いかなる計量単位を使用しても規制を受けることはありません。しかしながら、ISOやJISなどの規格に定められている単位があれば、その単位を採用することが望ましいでしょう。
Q12 導電率の単位として、接頭語を二つ使用した「μS/cm」は可能か。
A12 A5の回答と同様使用可能です。ISOでは接頭語の個数を実用上差し支えない範囲に制限し、多用しないように勧告しています。なお、導電率は計量法の規制する物象の状態の量に含まれません。

 (4)その他
Q13 重量という用語に対して質量の計量単位キログラム(kg)を使用することはできるのか。
A13 (財)日本規格協会SI採用促進委員会が平成2年に発行した「日本工業規格における国際単位系(SI)導入に関しての技術的指針」においては質量と力を区別することを薦めています。重量という用語は、学校教育及びJISなどの規格の中では、力を表すものと使用されていますので、質量の概念を表すのであれば、質量という用語を使用するべきです。計量法では用語について規制しているわけではありませんが、SI化を進めるに当たって、なるべく正しい用語を使用することが、重要となります。重量や荷重などの質量を意味するものか、力を意味するものか誤解を生む可能性がある用語に関しては、なるべく使用しないようにするか、用語が意味する明確な意味を注釈するなどの対処が望ましいでしょう。
Q14 従来、工学分野では、絶対圧を表示する単位にパスカル(Pa)、相対圧を表示する単位に重量キログラム毎平方メートル(kgf/cm2)を使用するのが一般的であったようだが、今後の圧力の絶対圧、相対圧の表示方法はどうなるのか。
A14 パスカル(Pa)が絶対圧だけを表すということではありません。パスカルが相対圧を表すケースも当然あります。計量法はパスカルを相対圧、絶対圧の双方に用いて全く問題ありません。また、法律では相対圧、絶対圧の表示方法まで規定していませんが、ISOでは相対圧には「Gauge」又は「Pe」を表示することを推奨している例や、絶対圧には「abs」などを表示することを推奨している例があります。
 

2.計量器について
 
Q15 Q15:従来単位(kgf、kgf/cm2など)で表示されている計量器はいつまで使用可能か。
A15 計量法は、非法定計量単位の付した計量器の販売を規制しているので、使用についてまで規制はしていません。計量器の寿命まで使用できます。ただし、その計量器を使用して取引又は証明に係る計量を行う際には、法定計量単位に換算する必要があります。なお、従来単位目盛の計量器は在庫品以外は入手できなくなります。
Q16 従来単位を付した計量器はいつまで入手できるのか。
A16 平成11年9月30日で猶予期限が終了しますので、平成11年10月1日以降の販売は規制されることとなります。しかし、猶予期間内に製造された削除対象の計量単位が付された計量器については、この規制は適用されません。
Q17 従来単位を付した計量器の校正は可能か。
A17 可能です。しかしながら、校正結果は猶予期間後からは法定計量単位に換算して出されます。しかしながら、事業者によっては受け付けないケースも考えられますので、各事業者に問い合わせてください。
Q18 猶予期限前に購入した削除対象単位(非SI単位)を付した計量器を、組み込んだ商品を販売することは可能か。
A18 可能です。猶予期間前に製造された計量器については規制がかかりません。

3.図面、証明書等のSI化について
 
Q19 Q19:重力単位系からSIへの換算するに当たって、重力加速度を9.80665m/s2として換算しなければいけないのか。
A19 換算の方法が法律で定められている訳ではありません。換算の方法については、ISO、JISなどで定めている換算の方法が参考になるでしょう。すべてが、9.80665を使用している訳ではなく、例えば、測定誤差が大きいトルク計などでは10を利用して換算している例もあります。それぞれの実情に応じた換算をしていただいて、問題ありません。
Q20 削除対象単位が使用されている古い図面を、猶予期間後に使用可能か。
A20 古い図面などは、従来からの契約の継続で使用される場合は変更の必要がありませんが、変更などがあれば、新たな契約に使用する場合には、SI化することが必要となります。

4.輸出入に関して
 
Q21 輸出される製品に非法定計量単位の部品(素材、計器等)を組み込みたい。入手可能か。
A21 計量法の規制は、輸出される製品(部品)には適用されません。したがって、輸出用(直接、間接を含む。)ということであれば、製品メーカーは販売可能です。
Q22 輸出される商品に非法定計量単位による証明書を発行することは可能か。
A22 輸出される貨物の取引又は証明については、計量法の規制は適用されません。したがって、可能です。

5.その他
 
Q23 ネジなどの呼び名にインチを使用してよいか。
A23 ネジなどのように、呼び名や規格(サイズ)の意味でインチを使用することを、計量法が規制しているわけではありません。
Q24 食品のカロリーは、猶予期間後ジュールに変更しなければならないのか。
A24 用途を限定して使用できる法定計量単位の中に、栄養分野の熱量のカロリーがあります(新計量法とSI化の進め方p.10参照)。食品のカロリー表示は栄養分野でありますので、カロリーの使用が可能です。また、ジュールを使用することも可能です。

 
問い合わせ先:通商産業省 機械情報産業局 計量行政室
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