イカ・タコでの人工放射性核種の
蓄積のされ方について
背景と目的
 海洋放射能研究室では,水産物の食の安全性と,平常時の放射能濃度を把握するため,日本周辺海域で漁獲される海産生物中の人工放射性核種(人工的に作り出された,放射線を放出する元素)の濃度をモニタリングしている。これまでの調査から,生物の種により人工放射性核種の蓄積傾向に違いがあることが分かっている。中でも,イカやタコなど頭足類の肝臓にはコバルト-60や銀-108mが蓄積する(図1)。
 本研究では,これら頭足類に特徴的な蓄積能力を分子生物学的な手法を用いて解明することを目的とする。

成  果
  1. スルメイカ肝臓から抽出したタンパク質から,銀-108mと結合するタンパク質(分子量70kDa)を電気泳動上で特定した。
  2. このタンパク質を各種クロマトグラフィーにより精製した(図2)。
  3. 精製タンパク質のN末端アミノ酸配列を解析し,データベース上で検索したが一致するタンパク質は存在しなかった。
  4. スルメイカ肝臓での銀-108mの蓄積には,これまで知られていないタンパク質が関与している可能性がある。
波及効果
  1. 海産生物への人工放射性核種の蓄積機構が明らかになり,新たな研究分野の発展が期待される。
  2. 海産生物への蓄積過程について科学的な説明が可能となることで,消費者に安全・安心への基本情報を提供できる。
  3. 海産生物を用いた新たな環境修復技術の開発につながる。

図1.スルメイカにおける人工放射性核種濃度の経年変化(白抜きは検出限界以下を示す。)

図2.スルメイカ肝臓から精製した銀-108m結合タンパク質(赤い丸で囲まれているバンド)
問い合わせ先: 海洋生産部 海洋放射能研究室(藤本)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp

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