並行在来線(5) 北陸新幹線(下)2017年04月04日
通勤・通学で利用する乗客も目立つ「IRいしかわ鉄道」=3月22日、金沢市・JR金沢駅
金沢開業で経営分離された並行在来線を運行する4社を比較すると、IRは7億4千万円、「しなの鉄道」(長野県)は3億3300万円の黒字を計上した。「えちごトキめき鉄道」(新潟県)は車庫など設備導入に伴う減価償却費がかさみ、63社中最大の赤字となる18億9300万円の損失を計上。「あいの風とやま鉄道」(富山市)は1億2100万円の黒字だが、16年度は赤字を見込む。 IRの好調な経営には北陸新幹線の開業に伴う「北陸人気」などが寄与した。ただ、このまま将来にわたり黒字を維持できるかは不透明だ。22年度末に予定される北陸新幹線の敦賀(福井県)延伸で石川県内の経営区間が移管され、輸送密度が低下すれば、経営への影響は必至だ。多くの三セク鉄道と同様、経営基盤を強固にする手だてを模索している。 石川県や金沢市などが株主となって2012年に設立した「IRいしかわ鉄道」(同市)は、北陸新幹線の金沢開業に伴いJR西日本から経営分離された同県内の金沢―倶利伽羅(くりから)間を15年3月に引き継いだ。一般的に距離が短ければ維持費は抑えられ、延長17.8キロ区間で5駅を運行する距離の短さが強みとなっている。 開業1年目で北陸ブームに沸いた15年度(4~12月)の利用者数は1日当たり2万6900人で、16年度(同)は1.4%減の2万6500人となった。内訳は定期利用者が0.1%増、定期外の利用が4.8%減。IRの担当者は「定期の利用者は継続しており、定期外の利用も北陸新幹線が前年比8%減だったことを考えれば減り幅は少なく、堅調に推移していると捉えている」と語る。 新幹線転換型の第三セクター鉄道としてはトップの経常黒字を計上した要因として、観光利用客が一定数いたことに加え、JRから経営分離する際に石川県から補助金約62億万円を受けており、減価償却費が発生していないことが挙げられる。JRが譲渡前に線路などの設備を十分に補修しており、修繕費が通常より掛からなかったことも大きい。16年度は通常の修繕費を計上。収益は縮小するものの、黒字は確保できる見通しだという。 ただ、今後は人口減少に伴う利用客減に加え、北陸新幹線の敦賀(福井県)延伸をめぐる並行在来線の取り扱いが大きな課題となる。延伸後は金沢―福井県境の約50キロ区間がJRから経営分離される見込みで、IRが担うことになれば、短区間運行の強みが薄れる。IRは「(延伸後の路線を担えば)輸送密度が下がり、採算は少なくなるだろう。利用者数を増やし、安定的に事業を継続させることが必要だ」としている。 石川県新幹線・交通対策監室によると、金沢―福井県境間では1日当たりの利用者数が約9200人にとどまると推計されるという。3月30日には石川県内の全自治体、経済団体などが検討会を設置し、延伸後の経営計画策定に向けた協議を始めた。奥羽、羽越両新幹線が実現すれば、本県では奥羽本線、羽越本線が並行在来線の対象となる可能性が高いが、石川のケースとは人口減少が課題の沿線という共通点もある。今後、並行在来線の課題を抱えることになる本県の沿線自治体にとって、石川県の議論は一つの試金石となる。(「山形にフル規格新幹線を」取材班) 意見お寄せください山形新幹線について、読者の皆さんの意見、考えをお寄せください。体験談などもお待ちしております。ファクス023(641)3106。Eメール dokusha@yamagata-np.jp
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