中国人「強制連行」訴訟 請求を棄却 大阪地裁

 戦時中に中国から「強制連行」され、秋田県の花岡鉱山や大阪府内の造船所などで過酷な労働を強いられたのは当時の日本の政策によるとして、中国人の元労働者と遺族が国に対して元労働者1人当たり550万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が29日、大阪地裁であった。酒井良介裁判長は「日中共同声明により個人の請求権は裁判上失われた」として、請求を棄却した。原告側は控訴する方針。

 一方で、酒井裁判長は判決理由で「中国人労働者は強制的または真意に基づかずに日本に移入され、多くの死者が生じた」とし、労働力不足が背景にあった戦時下の国策に基づき「強制連行」が行われたと認定した。

 日中の戦後補償をめぐっては、昭和47年の日中共同声明で「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と規定している。

 最高裁が平成19年、元労働者らが西松建設に損害賠償を求めた同種の訴訟で、共同声明の規定をもとに裁判上の個人の賠償請求権は放棄されていると判示し、訴えを退けて以来、いわゆる強制連行訴訟では、最高裁判例を踏襲し、棄却が続いていた。

 訴状によると、原告は、元労働者16人は昭和18~20年、中国・河北省や山東省などで旧日本軍などに拘束され、日本に強制的に連行されたと主張していた。原告の一人は、花岡鉱山で労働者が蜂起し多くの死者が出た「花岡事件」(20年)の生存者で、残りは元労働者の2~3世。損害賠償のほか、総理大臣名の謝罪文の交付なども求めていた。

 原告側は判決後に大阪市内で記者会見。原告の一人、王開臣(おうかいしん)さん(66)は「父親たちが強制連行されたことは事実。謝罪・賠償をして解決してほしい」と述べた。

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