熱波師の鮭山未菜美さん

 サウナの「熱波師」(アウフギーサー)として屈指の人気を誇る鮭山(しゃけやま)未菜美さん。追っかけのような熱烈なファンがいるほどだが、かつて芸能界にいたときは自分の存在意義に深い葛藤を抱えていたという。畑違いに見える仕事に転身した今は何を目指し、悩んでいた当時をどう振り返るのか。

【写真】ショーのような演出も。元アイドルの熱波師はこちら

 そもそも「熱波師」とは何か。

 サウナ内で、熱したサウナストーンにアロマを加えるなどした水をかけて蒸気を発生させる。これは「ロウリュ」と呼ばれ、サウナの本場・フィンランドの入浴方法。蒸気によって室内の温度は一気に上がり、汗が噴き出す。 

 その蒸気をタオルを振り回しながら攪拌(かくはん)して、客の発汗をさらに促すのが「アウフグース」である。こちらはドイツ発祥と言われているが、この仕事をするのが「熱波師」(アウフギーサー)である。 

 イベントは定められた時間に始まり、予約制のこともある。開始前に熱波師があいさつをすると、座ったお客さんたちは待っていましたとばかりに拍手を送るのが通例だ。熱波師と常連客との掛け合いがあったり、笑いがあったりと和やかな雰囲気だが、熱波師は体調面の注意点はしっかり伝え「無理だけはしないように」と念を押す。

 攪拌のスタイルは熱波師それぞれだ。音楽に合わせて踊るようにタオルを回したり、ストーリー性のあるショーをしたりと、10~15分前後、独自のパフォーマンスで客を楽しませつつ熱波を送る。利用者は体調面への注意は必要だが、汗だくになる快感と、その後の水風呂の気持ちよさに「ハマる」人が増えているのだ。

和装姿でタオルを振る鮭山さん/@池田(ゆかい)

 前置きが長くなったが、鮭山さんは特定のサウナの従業員ではなく、日本には数少ないフリーの熱波師である。毎日、各地のサウナを飛び回り「日本一、予約が取れない熱波師」と言われるほどの人気ぶり。熱烈なファンは、追っかけにちなんで「追っ鮭(しゃけ)」と呼ぶ。 

 ただ、その人生は順風ばかりではなかった。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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