加須市のサトエ記念21世紀美術館、21年の歴史に幕 最後に届け芸術への想い 縁深い作家らの企画展26日まで

2022年6月4日 07時34分

縁の深い作家らの作品が並ぶ最終企画展=いずれも加須市水深のサトエ記念21世紀美術館で

 埼玉県加須市水深の「サトエ記念21世紀美術館」が今月26日で閉館し、21年の歴史に幕を閉じる。新型コロナウイルス感染拡大による利用客の減少などが要因。最後となる企画展「芸術への想(おも)い展」が閉館日まで開かれている。(寺本康弘)
 学校法人佐藤栄学園(さいたま市)の創設者、故佐藤栄太郎氏が所蔵品などを広く一般に公開し、芸術文化の振興を図ろうと、親交のある作家の協力を得て二〇〇一年五月に開館した。公益財団法人が運営している。
 約五千八百平方メートルの敷地には彫刻の置かれた日本庭園があり、平屋建ての館内は樹齢数百年の秋田杉を用いて木のぬくもりを感じる空間となっている。作家のトークショーや講演会、加須市内の小中学校の児童生徒が出品する「こども美術展覧会 in KAZO」など恒例イベントも好評だった。

26日に閉館するサトエ記念21世紀美術館。日本庭園に彫刻が展示されている

 しかし、コロナ禍で感染防止のために団体客の受け入れやイベントを自粛したため、利用客が減少。コロナの収束が見通せない上、最近の物価高なども重なり、来館者数が以前ほど回復する見込みがないと判断して閉館を決めたという。
 最後の企画展では、これまでに同館で複数回展示をしてきた縁の深い作家らの油彩画や彫刻約五十点を展示している。
 フランスの風景を中心に描き続けた大津鎮雄氏(一九二〇〜二〇〇八年)が日展で文部大臣賞を受賞した「山添(やまぞ)いの家」や、羽生市を拠点に活動した画家寺井力三郎氏(一九三〇〜二〇二一年)の油彩画「廻送(かいそう)列車」など代表作が並ぶ。また、自身も日展で特選を受賞するなど彫刻で才能を発揮した佐藤氏の作品も展示されている。
 〇一年の開館前の準備から携わってきた学芸員の江口健さん(49)は「閉館にさみしい気持ちはある」と語る。ファンから「突然のことで残念」といった声も届いているといい、「最後なので美術館自体も含め、展示作品を見てほしい」と呼びかけている。
 午前十時〜午後五時。月曜、火曜日休館。入館料は一般九百円、大学・高校生七百円、小中学生六百円。問い合わせは、同館=電0480(66)3806=へ。

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