パリ協定推進、米抜きで G7環境相会合が共同声明
【ボローニャ(イタリア北部)=原克彦】主要7カ国(G7)環境相会合は12日、米国を除く6カ国が地球温暖化防止策の国際的な枠組み「パリ協定」の履行を推進すると盛り込んだ共同声明を採択し、閉幕した。米国については注意書きで、二酸化炭素(CO2)の排出削減に取り組むと記した。妥協案で声明の採択にこぎ着けたが、米国と6カ国の隔たりは埋められなかった。
共同声明では日英仏独伊とカナダ、欧州連合(EU)の環境担当閣僚が「パリ協定は覆せないものであり、全面的に尊重することが地球の安全と繁栄のカギであると合意した」と強調。批准していない国に対し、2018年までに対応するよう求めた。
一方、米国は注意書きの中でCO2の排出削減へ努力を続けると明記。「国内の優先事項である強い経済と健全な環境を維持できるよう重要な国際パートナーと連携する」とした。パリ協定からの離脱を宣言したのを受け「声明の気候変動関連のセクションには加わらない」と記し、他の6カ国と距離を置いた。
山本公一環境相は閉幕後に「米国がパリ協定脱退を表明するなか、声明を出せたのは大きな成果だ」と記者団に語った。米国に妥協して声明をまとめたとの指摘に対しては「米国を孤立させてはいけない、との共通認識があった」と説明。米国は排出削減を続ける意向だと強調し、「政策について対話することが多く出てくる」と協力する姿勢を示した。
米国のトランプ大統領は1日にパリ協定からの離脱を宣言。今回の環境相会合は主要国の担当閣僚が集まる最初の国際会議で、日欧とカナダの6カ国がどう米国に対応するかが注目されていた。
温暖化対策以外の分野では、深刻化するプラスチックごみによる海洋汚染を防ぐための努力を強化することを盛り込んだ。共同声明と併せて、資源の有効活用や食品廃棄の削減に貢献する方策をまとめた「ボローニャ5カ年ロードマップ」も発表した。
パリ協定を巡る米国と6カ国の対立は、5月の主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)でも結束の乱れを象徴する出来事となった。トランプ氏は離脱表明の際に協定を再交渉する意向を示したが、独仏伊はその直後に応じないとの共同声明を発表。歩み寄りの兆しが見えないまま環境相会合に突入した経緯がある。
閣僚らの早退や欠席が相次いだことも調整に響いた。プルイット米環境保護局長官は初日の午前の討議の後に会場を離れた。英国も新政権作りの最中で環境相が出席していない。フランスのユロ・エコロジー相は国民議会(下院)選挙への対応で11日を欠席し、12日に会場入りした。ドイツのヘンドリクス環境相も12日の討議の前に帰国した。
パリ協定は国連気候変動枠組み条約を親条約とし、2015年に採択された。気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える目標を掲げる。中国やインドなど経済成長でCO2排出量が増えた新興国も含め、ほぼ全ての国・地域が20年以降の対策に参加する内容だ。