衝撃の今季限り退任表明 阪神・矢野監督の決意 「自分も覚悟をさらに決められる」

[ 2022年2月1日 05:30 ]

<阪神宜野座キャンプ>ミーティングで話す矢野監督(球団提供)
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 阪神・矢野燿大監督(53)が31日、今季限りで退任する決意を電撃発表した。1日の春季キャンプ開始を控えた沖縄県恩納村の宿舎での全体ミーティングで選手、スタッフに直接告げるという超異例の表明だった。3年契約最終年だった昨季は優勝したヤクルトから勝率5厘差の2位に終わり、単年で契約延長。自ら退路を断ち、悲願のV奪回へ全身全霊を注ぐ覚悟を示した。

 キャンプイン目前の阪神に激震が走った。本来は春季キャンプの方針を伝える全体ミーティングの場で矢野監督が自ら今季限りでの退任を明言した。

 「俺の中で、今シーズンをもって監督は退任しようと思っているので、それを選手たちに伝えて。俺自身、退路を決めた中で“今日が最後だな”という気持ちであいさつをさせてもらった。2月1日も、もう帰ってこない一日。“来年は監督という立場でここに来ていることはない”という気持ちを持って、自分も挑戦していきたい。それがチームのためにも選手のためにも、申し訳ないけど、俺のためにもなるのかな、という決断だった」

 昨季は前半戦で首位を快走しながら、ヤクルトの猛追を受け、最大7ゲーム差を逆転されて勝率5厘差の2位に終わった。球団は就任から3、2、2位と結果を出してきた手腕を評価し、昨年9月16日に続投を要請。シーズン終了後の11月9日に1年契約での延長が決まった時点で「最後の一年」を決意していたことを明かした。

 「続投要請を球団からしてもらっていた時に自分の中でもいろいろ考えることも多くて。決めたのは、もちろん、シーズン終わってからですけど、何が一番、チームにとっても、選手にとってもいいのかなという中で、そういう決断に」

 勝負師というより教育者タイプ。「超積極的」「誰かを喜ばせる」「諦めない」といった理念は、3年間で選手にも浸透した。その手応えが逆に引き時を感じさせたのか。一方で「勝ち負けよりも大事なこともあると思う」と話し、ミーティングで道徳的な映像を見せるなど年々、人間教育に力が入った。「勝った、負けた」の世界で神経をすり減らす日々を長く続けるという将来像は、描けなかったのかもしれない。

 「スッキリしたね。言うことでマイナスな部分もあるのをしっかり考えて、それでも伝えた方がいいというか、自分も覚悟をさらに決められる。本当にいいチームになってきている手応えがスゴくあって。今の俺の伝えられることは、この3年間で全力で伝えてきた。その集大成、俺の勝手な個人としての集大成としてね」

 言葉通り、終始スッキリした表情でオンライン取材に応えた。悲願成就へ「退路」を断って挑むラストシーズン、ラストキャンプ。監督4年目はカウントダウンとともに始まった。最高のゴールを目指して――。(山添 晴治)

 ◇矢野 燿大(やの・あきひろ)1968年(昭43)12月6日生まれ、大阪府出身の53歳。桜宮、東北福祉大を経て90年ドラフト2位で中日入り。97年オフにトレード移籍した阪神で正捕手に定着し、リーグVの2003、05年はベストナインとゴールデングラブ賞。10年引退。通算1669試合で打率・274、112本塁打、570打点。16、17年は阪神1軍作戦兼バッテリーコーチ、18年は阪神2軍監督を務め、19年から阪神第34代監督。

 【開幕前の退任発表 09年ロッテ・バレンタイン監督も】
 プロ野球の監督が開幕前にそのシーズン限りでの退任を発表したケースは、近年では09年ロッテのバレンタイン監督がある。前年08年に残り1年の契約の延長をめぐって球団フロントと対立。12月に09年の成績にかかわらず、10年以降の契約を結ばない旨を通告された。09年のロッテは5位に終わり、バレンタイン監督は予定通り退任した。

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