上海協力機構が共同宣言 イラン23年加盟、10カ国に
首脳会議、「多極的世界秩序」を強化
中国とロシアが主導する地域協力組織「上海協力機構(SCO)」は15~16日、ウズベキスタンのサマルカンドで首脳会議を開いた。16日には複数の大国や地域統合による「多極的世界秩序」の強化を盛り込んだ共同宣言を採択した。イランが正式に加盟し、10カ国体制に広がることが固まった。ただ緩やかな協力組織だけに、加盟国の協調には限界がある。
「内政干渉にはともに対抗しなければならない」。16日の首脳会議の全体会合で、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾問題などを念頭に呼びかけた。
SCOは2001年、ソ連崩壊後の国境地域の安定と信頼の醸成、加盟国間の協力促進を目的に設立し、合意履行の拘束力がない緩やかな協力を目指してきた。中ロのほか、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジア4カ国とインド、パキスタンが加盟する。
今回の首脳会議には加盟国とオブザーバー国(アフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴル)や対話パートナー国(アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、トルコ、スリランカ)の一部など計14人の首脳が出席した。
首脳会議は16日、共同宣言を採択し閉幕した。共同宣言には政治や経済、安全保障、文化など様々な分野での協力拡大を盛り込んだ。中ロの意向を反映し「米一極世界」に対抗する目的で「多極的世界秩序」の強化をめざす文言も入った。
アジアの台頭やウクライナ侵攻などを受けて世界は大きな変革期にあるとみなしており「多極的世界秩序」の強化で米主導の世界秩序に対抗したい考えだ。
国際的地位の向上へSCOは加盟国を積極的に増やす。今回、イランが加盟に向けた覚書に署名し、インドでの次回23年の首脳会議で正式メンバーとして参加する。ロシアの同盟国ベラルーシの加盟手続きも始まった。トルコなども加盟を希望している。
将来の加盟を視野に入れた対話パートナー国として、新たにエジプトとサウジアラビア、カタールの参加が決まった。アラブ首長国連邦(UAE)とクウェート、ミャンマー、バーレーン、モルディブも対話パートナー国の資格を与える手続きが始まることになった。
ただSCOは欧米の政治・軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)のような一枚岩ではない。合意事項には原則的に拘束力がなく、地域の重要な問題は主に2国間で決定している。
中印など対立する国々もあり、地域交流や経済協力の拡大がどこまで進むかは不透明だ。中国とロシアも15日の首脳会談で対米結束を誇示したが、ウクライナ危機を巡り不協和音も聞こえる。
中ロはBRICS(中ロ、ブラジル、インド、南アフリカ)なども利用し、国際秩序の形成で米欧への対抗力を強めようとしてきた。BRICSの参加国を広げる枠組み「BRICSプラス」も提唱し、新興国や発展途上国を取り込む狙いだ。
米国や日欧などは自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つ国々との連携を強める。米日豪印の「Quad(クアッド)」や、米英豪の軍事枠組み「AUKUS(オーカス)」などを立ち上げ、アジア太平洋地域で中ロに対する抑止力を強化している。
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