当選無効で歳費返還、与党が法改正を検討 河井陣営への1.5億円、使途なお不明確

2021年5月13日 06時00分
 与党は12日、当選無効になった国会議員の歳費返還を可能にする法改正に向け、協議を進めることで一致した。2019年参院選の公選法違反事件で有罪となった河井案里元参院議員に対し、辞職まで歳費が支給されたことへの批判が強いため、次期衆院選を前に「政治とカネ」問題に向き合う姿勢を示さざるを得なかった事情がある。自民党は河井氏陣営に提供した1億5000万円の使途を明確に説明しておらず、野党には反発の声もある。
 自民党の二階俊博、公明党の石井啓一両幹事長らが12日、国会内で会談し、歳費法改正案の今国会への提出と成立を視野に検討することを確認した。現行の歳費法には返還に関する規定がない。
 河井元議員の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙で陣頭指揮を執った党広島県連会長の岸田文雄前政調会長も二階氏と面会。公認候補が落選した選挙戦では「(河井氏に)歳費だけ支払われたままということに多くの有権者から疑問の声が寄せられた」として、返還できるような仕組みに見直すべきだと要請した。
 岸田氏は記者団に、「政治とカネ」問題について「党の体質に関わる問題だ。自民党がどう対応しているかは全国の選挙区で問われる」と強調した。
 実現には課題も残る。事後的に当選無効になっても、在職中に本会議で行った採決などを無効にするのは「法的安定性に欠ける」(公明党幹部)ため、議員活動に応じた歳費の全面返還を義務付けるのは困難という見方がある。
 立憲民主党は同様の法改正を検討する方針。共産党の田村智子政策委員長は本紙の取材に「自民党は河井氏の事件の金の流れなど全容を説明すべきで、問題のすり替えだ」と批判した。(川田篤志、市川千晴)

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