米国西部の砂漠に生息するセイブガラガラヘビ(Crotalus Viridis)は、究極のサバイバーだ。1年に1度だけ栄養豊富な餌を食べれば生き延びることができる。それでも、時には少しの水分を摂取しなければ、しなびて息絶えてしまう。
では、水が乏しいロッキー山脈で、この粘り強い捕食者はどのようにして水分を補給しているのだろうか。実は、自分の体を雨水を集める“洗面器”に変身させているのだ。
雨が降り始めると、セイブガラガラヘビはするすると外に滑り出て、とぐろを巻く。そう説明するエミリー・テイラー氏はヘビを研究する生物学者で、米カリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校の爬虫類生理生態学研究室を率いている。
体を円盤のように平たくすると、雨が水玉となってうろこに付着する。2019年、同じ行動をする近縁のニシダイヤガラガラヘビ(Crotalus atrox)の研究で、うろこに迷路のような微細な構造があり、水滴が滑り落ちないようになっていることが明らかにされている。
2020年にテイラー氏は、米ディキンソン大学(ペンシルベニア州)のスコット・ボバック氏とともに、コロラド州でタイムラプス(低速度撮影)カメラを設置し、野生のセイブガラガラヘビのメスが集まって子育てをする様子を撮影した。これは「プロジェクト・ラトルカム」という市民参加型の科学プロジェクトの一環だった。
撮影された画像から、セイブガラガラヘビの子が、生まれた翌日でも平らな姿勢をとることが明らかになった。「生まれた時からのどが渇いているので、雨水を集めようとする本能が備わっているのです」とテイラー氏は言う。(参考記事:「ガラガラヘビのガラガラ音、低音と高音を使い分け」)
当然ながら、瞬時に体を洗面器に変えられる動物などごくわずかだ。では、他の動物たちはどのようにして渇きを癒やしているのだろうか。
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