2021.08.06

メイドカフェの「メイド」が悩む、時間外労働としての「SNS労働」

ツイッターが「お仕事」になってしまう

2021年6月21日に、『ガールズ・メディア・スタディーズ』という書籍が北樹出版から刊行された。この書籍は、「ガールズ」(この語に完全に対応する日本語はないが、「女の子たち」「女性たち」といった意味で、必ずしも物理的年齢としての「若さ」に拘泥するものではない)とメディアとの関係性を考えるための教科書として執筆され、女の子たちのメディアにおける表象と実践についてのさまざまな論考が集められている。

筆者はその中の第4章「メイドカフェ店員のSNSブランディング――アイデンティティの維持管理という時間外労働」で、メイドカフェ店員が普段SNSとどのように付き合い、それを運用しているのかについて論じた。

私たちの多くは、現在、日々SNSで自分のことを提示しながら生きている。仕事用の(もしくは仕事用にも用いている)SNSを、24時間365日更新し続けなければならないような、SNSに追い立てられる感覚に陥っている人も多いだろう。

筆者は普段、メイドカフェでの労働経験について研究を行っている。そこで、メイドカフェ店員がSNSとどのように付き合っているのかについて考察することにより、現代における無賃・時間外の「SNS労働」とも呼べる労働の現状の一端を明らかにしようとした。ここでは、その内容の一部を紹介したい。

 

メイドカフェとはどんな場所か

まず、「メイドカフェ」とはどのような場所であるかがイメージできない読者のために、簡単にメイドカフェの起源や歴史について触れておきたい。

メイドカフェの発祥は、1998年の東京キャラクターショーで開催された企画カフェであるとされている。この企画カフェは、ファミリーレストランの女性店員との恋愛ゲームである『Pia❤︎キャロットへようこそ!!』をテーマにしたもので、カフェ店員は同ゲームに登場する女性店員の制服を着て働いていた。

その後、その流れを継いで、2000年に元祖コスプレ喫茶「カフェ・ド・コスパ」が日本で初の常設店として誕生した。「カフェ・ド・コスパ」は2001年にリニューアルし、「キュアメイドカフェ」と名前を変え、制服がメイド服に統一されるようになった。これが元祖メイドカフェであり、いまでも営業を行っている。

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