塩野義製薬に400億円申告漏れ指摘 異議申し立てへ
塩野義製薬が大阪国税局から2013年3月期までの3年間について約400億円の申告漏れを指摘されたことが、12日分かった。同社は連結対象の英国子会社への現物出資を組織再編税制の対象として申告していたが、同国税局は「適用外」と判断したもようだ。塩野義は「事前に国税当局に照会しており、承服できない」として、異議を申し立てる方針。
更正処分の結果、過去の赤字と相殺され、追徴課税は地方税や過少申告加算税を含め約13億円となる見通し。
指摘があったのは、抗エイズウイルス(HIV)治療薬開発のため、英ViiVヘルスケア社と英国で共同出資していた会社(JV)への出資を巡る税務処理。
塩野義の説明などによると、同社はJVの持ち分を連結対象の英子会社に現物出資した際、簿価(約130億円)で算定して税務申告していた。
だが英子会社はこの持ち分をViiV社に譲渡し、対価として同社株10%(時価約530億円)を取得。同国税局は、差額に相当する約400億円に対して塩野義の課税対象の所得に当たると判断したとみられる。
塩野義側はJV持ち分の現物出資について、海外同士の資産移転などの一定条件を満たせば簿価で譲渡したものとして算定できる「適格要件」に当たると判断。国税局側は適格要件に当たらず、時価算定しなければならないと認定したもようだ。
塩野義は「現物出資の税制上の適格性については事前に国税当局に照会し、その確認を得たうえで再編を行った」などと説明している。
法人税法では企業の経営効率向上のため、組織再編について特別な課税ルールを設けている。再編で移転した資産は時価評価し、含み益を表面化させて課税するのが原則だが、一定の条件を満たせば、簿価で資産移転を認め、例外的に課税を繰り延べられる。