イエメン内戦2カ月の停戦合意 国連仲介、実効性焦点に
【ドバイ=福冨隼太郎】内戦が続く中東イエメンで、サウジアラビアが率いるアラブ有志連合とイスラム教シーア派武装勢力フーシ派が2カ月間の停戦で合意した。2日にイスラム圏の多くで始まった断食月(ラマダン)に合わせたもので、国連が仲介した。和平に向けた転機となるとの見方がある一方、過去にも停戦の試みが失敗に終わっており、内戦に終止符を打てるかは見通せない。
国連のハンス・グランドバーグ・イエメン担当特使は1日、双方が休戦に合意したと発表した。声明でグランドバーグ氏は「休戦の目的は紛争の終結が可能だという希望を与えることだ」と強調。双方が合意すれば、2カ月間の期間後も停戦を継続することができるとの見通しも明らかにした。
国連は2カ月間の休戦期間中に、恒久的な停戦に向けた動きを進める構えだ。国連のグテレス事務総長は「(合意は)壊滅的な戦争を終わらせる最初の一歩でなければならない」と、停戦を歓迎する声明を発表した。
イエメンでは2011年に本格化した民主化運動「アラブの春」の余波で国内が不安定化した。15年にはクーデターを起こしたフーシ派が首都サヌアの大統領宮殿を包囲し、当時のハディ暫定大統領が宮殿を脱出した。同年にサウジがハディ暫定政権を支援するかたちで軍事介入すると、イランを後ろ盾とするフーシ派との内戦が激化した。
今回の停戦合意が約7年間に及ぶ内戦に終止符を打つきっかけになるかは不透明だ。過去にも停戦に向けた動きがみられたものの、完全な戦いの終わりにはつながらなかったからだ。21年3月にはサウジ側が内戦終結に向けた停戦を提案したが、フーシ派側が応じなかった。20年にも有志連合側が停戦を宣言したが戦闘は続いた。
フーシ派はサウジや敵対国にミサイルや無人機による攻撃も重ねている。3月25日にはサウジ西部ジッダにある国営石油会社サウジアラムコの石油貯蔵施設が攻撃を受け、フーシ派が攻撃を主張した。有志連合に加わるアラブ首長国連邦(UAE)でも1月に無人機や弾道ミサイルによる攻撃が相次ぎ、フーシ派が攻撃を主張している。
国連によると内戦ではこれまでに37万人以上が犠牲となっており、同国で深刻な人道危機を招いている。有志連合を主導するサウジとフーシ派を後押しするイランの「代理戦争」ともみられており、本格的な停戦に至れるかどうかは不透明だ。