<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>円楽師匠とともに 落語フェス運営責任者・竹下信孝さん

2022年10月28日 07時37分

「落語家の顔が分からず、最初は苦労しました」と竹下信孝さん 

 十一月三日から六日まで四日間、「第十六回 三遊亭円楽プロデュース 博多・天神落語まつり」が今年も開催される。二〇〇七年の第一回から運営に携わり、九州地方に落語フェスを根付かせた一人が、企画制作会社「アム・サポート」の執行役員、竹下信孝さん(58)だ。
 「出演者は、師匠方、二つ目、色物さん計二十人ほど。二日間の日程でした」という初回。「今年は五十人以上の落語家が出演し、一万六千人の来場者を見込んでいます」。福岡・博多の三会場二十三公演をメインに、小倉、鹿児島、熊本でも三公演。六、七人の社内スタッフを中心に、会場全体で百六十人態勢でお客さまを落語会へと案内する。
 九月に亡くなった円楽さんが「成長株の競演会」などと言った公演ごとのタイトルを決め、出演者を顔付けする役目。「アム・サポート」社が、出演者を迎えるための移動手段の手配や宿泊ホテルの部屋割りなどを含め落語会の運営全般を担う。
 「大阪の芸人も東京の芸人も、ここではみなさん地元ではなくゲストという感じで、リラックスなさっています。(林家)木久扇師匠と(笑福亭)鶴瓶師匠はここで初めて顔を合わせたそうです。写真を撮ったり、連絡先を交換し合ったり、噺(はなし)家同士の接点の場にもなっています」と、フェスならではの光景も。とりわけ出演者に好評なのが“楽屋食堂”だ。
 「円楽師匠が、せっかくみんな来てくれるんだから、ホットミールにしてほしい、と。楽屋ではもつ鍋やうどん、炊きたてのご飯にめんたいこなどを用意しています」と至れり尽くせり。コロナ禍前は、博多の名店で、六十〜七十人での打ち上げが毎晩の吉例だった。その分、会社としての利益も減るが「芸人さんに気持ちよく来ていただき、高座に上がってもらうためのおもてなしです。その結果、お客さまにもいい芸を見てもらえますからね」
 運営の両輪の片方、円楽師匠が亡くなったが、「来年以降も続ける予定です」と竹下さん。「円楽師匠が続けたいという思いだったので」 (演芸評論家)

第10回のオープニングセレモニーの様子

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