風を読む

教科書調査官と北朝鮮の闇 論説委員長・乾正人

中学教科書の領土に関する記述
中学教科書の領土に関する記述

むかしむかしのお話。

某記者が若いころ、事件取材でおっかなびっくり、反社会的勢力(当時こんな用語はなかった)の親分さんに取材に行った。

本題もそこそこに話が組織のあれこれに及ぶと(要するに敵対する暴力団や身内の悪口)、ちんぷんかんぷん。すっかり気分を害した親分さんに「何にも知らんガキやなぁ。アサヒでも読んで勉強してこい」と追い返された。

「その筋でも朝日新聞が読まれているのか」とうなだれて社に帰ったが、先輩から「それは『アサヒ芸能』のこっちゃ」と笑われたとか。

産経抄でも書いていたが、その「アサ芸」(21日発売号)が、「『北朝鮮スパイ』リストに『文科省調査官』」という驚くべきスクープを放った。記事によると、韓国留学中に北朝鮮工作員にスカウトされた日本の学者が、あろうことか教科書検定の要である文科省教科書調査官に任命された。

彼が、「従軍慰安婦」という誤った用語を中学校教科書に復活させ、左翼陣営が忌み嫌う「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を検定不合格にした張本人だという。

記事では、調査官を匿名にしているが、容易に特定できる。この人物は、某私立大学の非常勤講師(しかも英語)を務めているが、これが謎なのである。

調査官になるには、「視野が広く、人格が高潔」など4条件を満たさなければならないが、一番の難関は経歴である。条件の第1には、「教授または准教授の経歴がある者またはこれらに準じる高度に専門的な学識及び経験を有すると認められる者」とある。

彼は過去に韓国の大学で講師を務めているが、准教授の経歴は見当たらない。「専門的な学識」に該当するとすれば、毛沢東を礼賛した本くらいだ。

つまり、任用の過程で、毛沢東シンパの彼を強く推す人物が、文科省内にいたという推測も十分成り立つ。

第一、「北朝鮮スパイ」と疑われた人物を調査しなくていいのか。もし、事実でないならば、名誉毀損(きそん)で訴えるのがスジである。萩生田光一文相には、腹をくくって文科省の闇にメスを入れてもらいたい。できなければ、「安倍最側近」の看板が泣きますよ。

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