理想の美男をエロチックに…イケメン描いて15年 「少数派」日本画家・木村了子さんのこだわりとは

2022年5月8日 12時00分

木村さんの作品「俺たちアジアの虎」(本人提供)

◆転機は父脚本のポルノ映画

 そんな日々を送っていた20代後半、「極道の妻たち」シリーズでメガホンを取ったこともある映画監督の父・関本郁夫(79)が脚本を書いたポルノ映画を見たことが転機となった。
 「温泉スッポン芸者」(1972年製作、鈴木則文監督)の主人公の芸者を演じた女優のセックスに対するあっけらかんとした前向きさ、作品の持つ芸術性と娯楽性の高さ。開いた口がふさがらないほどの衝撃を受けた。
 特に日本髪に結い上げた芸者が、太ももをあらわにバイクを運転するシーンはとにかく格好がよかった。「これを描きたい!」。映画で描かれた女性のカラっとしたずぶとさ、強さは、自分が求めていた「女性像」だった。
 妊娠したのを機に、創作活動に専念するため会社を辞めた。しばらくした後、関本が監督した映画のセットに女性が縛られているふすま絵を日本画で描くことになった。日本画の線描が目指す人体表現にしっくりきた。今のスタイルの原点になった。
 学生時代から人を描くことは好きだった。ただ、人の何をどう描きたいのかが分からなかった。このころに「日本画で性を描く」という方向性が見えてきた。人の性は耽美たんび的、幻想的でもあるが、まぬけでおろかしくもある。そんな人間の本能を表現できると感じた。

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