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英総選挙の逆転期待が後退、EU残留派の希望は「風前のともしび」

  • 12日の総選挙、英有権者がEU残留意思を表明する最後のチャンス
  • 支持固めるジョンソン首相に対し、残留派は分裂と混乱に悩む

国民投票で英国が欧州連合(EU)離脱を決定してから3年半の間、一部の市民は離脱を阻止しようと奮闘を重ねてきた。だが、12日の総選挙でジョンソン首相率いる保守党が過半数を獲得しそうな見通しで、EU残留支持派の旗色は悪い。

  「これでEU残留の目は消える」。英国とEUの関係を研究する独立グループ「変わりゆく欧州の中の英国」のディレクターを務める英キングス・カレッジのアナンド・メノン教授はこう話し、「保守党がたとえ1議席でも過半数を確保すれば、EU離脱は実現する」と指摘した。

U.K.'s Boris Johnson & Michael Gove News Conference

ジョンソン英首相

  主要政党のうちEU離脱の中止を唯一、公約に掲げる自由民主党(LDP)は、残留を支持する有権者の半数も取り込めていない。国民投票の再実施を目指して運動を展開するはずだった主要組織は空中分解し、最大野党・労働党のコービン党首は2回目の国民投票を望むもののの、その際には「中立」を貫くと微妙な言い回しに終始している。

  対照的に、国民投票でEU離脱キャンペーンを率いたジョンソン英首相は、離脱強硬派の票を割る恐れがあるとみられたナイジェル・ファラージュ氏の影響力をほぼそぐことに成功。さらに労働党の地盤でもEU離脱支持者からの支持を浸透させつつある。各種の世論調査は総選挙で保守党が過半数を得る公算が大きいことを示す。そうなればジョンソン首相は、自身のEU離脱案を議会で通すことが可能になる。

  現在の英国ではEU残留を希望する有権者の方が多い。離脱完了を公約に掲げるジョンソン氏への支持は、有権者の多くが離脱を支持しているから、あるいは3年にわたる政治混乱にうんざりしたから、といった理由だけではなさそうだ。残留派は離脱中止か国民投票の再実施かなど方針を一本化させることができず、機能する超党派の連合を組むことにも失敗した。

  LDPの苦境はそれを象徴している。残留派の高い期待を背負って7月に当時38歳の若さで党首に就いたスウィンソン氏は、国民投票の再実施という従来の党の方針を改め、離脱中止の約束へとかじを切った。労働党との違いを打ち出す狙いがあったとみられるが、この方針は同党が議席回復を目指すイングランド南西部などで好意的に受け止められなかった。ある調査では、有権者はスウィンソン氏を目にすればするほど、同氏の好感度を低下させているという。 

General Election 2019

LDPスウィンソン党首の顔が描かれた選挙運動用バス(11月18日)

原題:
Remainers’ Dreams Are Dying in Boris Johnson’s Brexit Election(抜粋)

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