大相撲第55代横綱で優勝24回を誇る日本相撲協会、北の湖理事長(本名・小畑敏満=おばた・としみつ)が20日、直腸がんによる多臓器不全のため、死去した。
『輪湖時代』を築いたライバル、横綱輪島との名勝負は日本中を熱狂させた。横綱同士による千秋楽結びの一番は計20度を数え、通算対戦成績は21勝23敗とわずかに負け越した。
「輪島さんがいたからこそ私も頑張れた。横綱で並んでからは毎場所初日の前日になると対戦をイメージしたほどだ」
日大から鳴り物入りでプロ入りした天才肌の輪島に対し、北の湖は中学1年の13歳で力士になったたたき上げ。激しい対抗心を燃やした。自身の不祥事で角界を離れた輪島氏とはしばらく音信が途絶えたが、数年前に知人とともに食事で再会。以来、毎場所の番付表を1場所も欠かすことなく送り続けた。
一昨年12月にいん頭がんの切除手術を受け、声を失った盟友を、ずっと案じていた。「輪島さんの心の中に常に相撲が残っていてほしい。一緒に闘った土俵を忘れないでほしいんだ」。自らの現役時代の取組や成績をほとんど暗記した記憶の中には、輪島戦にすべてを注ぎ込んだ情熱も刻み込まれていた。