【ジャパンC 今週のキーマン】来年2月で引退角居調教師、キセキに3強撃破での3度目V託す

スポーツ報知
最後のジャパンCにキセキと挑む角居調教師

◆第40回ジャパンC・G1(11月29日・芝2400メートル、東京競馬場)

 第40回ジャパンC・G1は29日、東京競馬場の芝2400メートルで行われる。17年の菊花賞馬で、G1・2着4回がある実力馬のキセキを送り出す角居勝彦調教師(56)=栗東=を牟禮聡志記者が直撃。来年2月に引退を控えるジャパンC2勝トレーナーに、最後のJCへの思いなどを聞いた。

 ―“3強”が参戦するジャパンC(JC)にキセキで参戦。来年2月で引退する角居調教師にとっては最後のJCです。

 「本当に国内最強馬決定戦の枠に入れるのはすごいこと。紅白歌合戦に出るような歌手を抱えているようなものですからね(笑い)。最後の年までJCに使える馬がいるのは喜びです」

 ―キセキは18年のJCでアーモンドアイの2着。1週前は栗東・坂路を馬なりで52秒4―12秒3をマークした。

 「54秒くらいでいいよという指示で52秒台が出て、いい状態。天皇賞・秋は上手にスタートを切ってくれてうまく我慢できました。いい年になってもおじいさんになった感じはしないですし気性が安定してきている」

 ―JCはこれまで2度、制覇した。

 「(創設当時の)JCでヒールの靴を履いた女の人が海外馬を普通に引っ張って、レースも勝つ姿を見て、競馬の世界に入ってみたいと思った。競走馬は危なくて暴れるものだと教えられていたから、根底から馬のつくり方が違うのかなと。そういう馬と戦ってみたいと思って、馬の世界にひきつけられた」

 ―05年の海外G1初勝利から数々の海外遠征を行ってきた。

 「開業から海外に行くことを考えていた。憧れが強かったですね。飛行機輸送がとても高い壁でした。当時はイメージが全く湧かなかった。今では他国との行き来がしやすくなりましたね。それで一番、進化を遂げたのが日本の競馬です」

 ―今では毎年のように日本馬が海外G1を勝っている。

 「印象的なJCがカツラギエースが勝った年【注】。展開うんぬんより世界の馬を倒すという気持ちですよね。海外馬がこぞってきてくれていた頃。世界に出て行くことを夢見るには、どうやったら世界の馬に勝てるのか深く考えないといけなかった。(当時と比べて)日本の競馬は間違いなく強くなっている。サンデーサイレンスといった血が導入され、世界で修行した人が日本で調教をして、技術も上がっている」

 ―最後に意気込みを。

 「メンバーが強いので勝つことは簡単ではないけど、キセキもいい状態でここまでこられている。最後のJCを楽しみたいと思います」

【注】84年の第4回ジャパンCではカツラギエースが日本調教馬として初の優勝。10番人気の低評価だったが大逃げが決まり、外国馬10頭が出走したレースを制した。

〈取材後記〉

 馬を愛する思いがひしひしと伝わってくる。角居師は引退馬や馬と人の共生関係を支援する一般財団法人「ホースコミュニティ」の代表理事を務めている。海外の馬文化で「人の暮らしのなかにいる馬を見ると楽しいなと思う」と表情を緩ませる。日本では毎年、約7000頭の競走馬が生産される。競馬大国として新たな文化を思い描く。

 「今は引退競走馬の支援も全国的に広まってきた。JRAも絡んでサラブレッド中心の馬文化がスタートできないかと。競馬から始まり、(引退後の)ホースセラピーを含めた一貫した独自の文化ができれば、世界に類を見ない貴重な国になる。日本の競馬の愛され方を見るとできないかと思う」

 故郷の石川県内で天理教の仕事を継ぐため21年2月で引退する。それでも、「馬とは何らかの形でつながっていたい」と生涯ホースマンを掲げた。(牟禮 聡志)

 ◆角居 勝彦(すみい・かつひこ)1964年3月28日、石川県生まれ。56歳。86年から調教助手を務め、00年に調教師免許を取得し、01年に開業。JRA通算5455戦758勝(23日現在)。JRA重賞はG1・26勝を含む82勝。海外G1は米国、豪州、香港、ドバイで計5勝。ジャパンCは09年ウオッカ、14年エピファネイアの2勝。最多賞金獲得調教師賞5回、最多勝利調教師賞3回獲得。

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