横浜市電のレール 銭湯が市に寄贈 50年前に廃線、駐車場で長年眠る

2023年2月7日 07時46分

寄贈されたレールと市電保存館の北村館長=横浜市磯子区で

 前身の横浜電気鉄道の時代を含め、一九〇四(明治三十七)〜七二(昭和四十七)年に横浜市中心部で運行されていた路面電車「横浜市電」のものとみられるレールが同市中区で見つかり、市交通局に寄贈された。昨年末に取り壊された銭湯の駐車場の隅に、長年置かれていたという。レールの寄贈は珍しいといい、市電保存館(同市磯子区)で保管して扱いを検討している。(志村彰太)
 レールは長さ約四・五メートルで、昨年十一月に同館に運ぶ際、半分に切断した。さび付いて正確には測れないが、幅は上面約六・五センチ、底面約一二・五センチ、高さ約十四センチ。片側の端に外径一三・五センチほどの金属製の輪が取り付けてあるが、用途は分かっていない。もう一方の端には、線路同士をつなぐためだったとみられる部品が付いており、「山一」の刻印がある。
 寄贈した銭湯は、同市中区鷺山の「さくら湯」で、市電の麦田トンネルや麦田車庫に近い。市電の歴史に詳しい横浜都市発展記念館の岡田直・主任調査研究員は、レールの置かれていた場所やサイズ、廃止時にレールを含む市電の物品が一般に譲渡された経緯などから「市電のものと考えられる」と話す。

1970年ごろの麦田車庫付近。中央左側に見える煙突はさくら湯のものという=横浜都市発展記念館所蔵

 また、銭湯の歴史に詳しい同館の吉田律人・調査研究員によると、さくら湯は一九〇三年に開設され、六八年に建て替えた。二〇一八年に店主の高齢化などにより休業し、そのまま昨年閉業したという。
 レールは長年、さくら湯の駐車場に野ざらしで置いてあり、見物に来る市電ファンもいた。市によると、閉業に伴う取り壊しに際し、店主からレールの寄贈を提案されたという。市電保存館の北村秀明館長は「レールの寄贈は珍しい。昨年で市電廃止から五十年。まだ街中に残っていたのかと驚いた」と話している。

休業して間もない頃のさくら湯=吉田さん提供


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