仏、現金決済の上限引き下げ 付加価値税逃れに歯止め
【パリ=竹内康雄】欧州各国が多額の現金決済を制限する方向に動いている。フランスはこれまで現金決済を認めていた上限を引き下げ、今後は1000ユーロ(約12万5000円)以上の現金決済は認めない方針を決定。スペインやイタリアも同様に動いている。現金支払いによる取引をすることで付加価値税(消費税に相当)などの課税から逃れている商取引を正確に捕捉し、税収増につなげる。納税に関する不公平感をなくし、債務危機で緊縮財政を強いられる国民の不満を抑える狙いもある。
仏政府は今月11日、1000ユーロ以上の現金決済を禁止すると発表した。従来は3000ユーロだった。取引に主に仏国内の商店や小売店などがかかわった場合が対象で、個人間の取引は対象外。エロー首相は「不正行為と戦う国家の取り組みだ」と述べ、年内に法案をまとめ、早期に実施する考えを示した。
この取り組みの狙いは脱税対策。フランスはクレジットカードの普及が進んでいるものの、商店などでは現金決済も少なくない。この場合、取引があった事実を見えにくくすることもできるため、買い手である消費者は付加価値税を、売り手である商店は所得税などをそれぞれ納めないことが多発。「脱税の温床になっている」(仏メディア)との批判があった。
制度開始後は、1000ユーロ以上の取引をする場合、金融機関に決済の記録が残る小切手や銀行振り込み、クレジットカードなどを使うことが必要となる。カユザック予算担当相は仏紙フィガロの取材に対し「約10億ユーロの歳入増につながる」との見通しを示した。
オランド仏政権は2014年から付加価値税を現行の19.6%から20%に引き上げる計画。税収をしっかり確保することで財政改善につなげる狙いのほか、脱税による納税者間の不公平感をなくすのも目的のようだ。