和ろうそくや化粧品の原料、ブドウハゼの栽培など通じて「志賀野」PR 和歌山県事業

 ■愛着ある地域の名前復活へプロジェクト

 紀美野町北西部の旧志賀野村地域で、昭和の町村合併で名前が消えた「志賀野」の地名の復活を目指したプロジェクトが今夏、始まる。和ろうそくなどの原料となる「ブドウハゼ」の発祥地といわれ、近年は移住者らが営む飲食店やパン屋も人気を集めているこの地域。プロジェクトでは住民たちがブドウハゼの栽培や移住支援などを通して、地域のPRに取り組むという。

 県の過疎集落支援総合対策事業「櫨蝋(はぜろう)の里 志賀野活性化プロジェクト」として平成29年度から実施。27年5月に設立された地域住民らでつくる「志賀野さみどり会」が協議してきた計画を採用した。

 県によると、計画では、ブドウハゼの栽培などによる地域のPR▽お試し住宅やイベントの拠点となる施設の活用による移住者の呼び込み▽地域内外の交流促進-を掲げている。

 ブドウハゼは、ハゼの4大品種の一つとされ、ブドウの房のように実る。江戸時代に九州から持ち込まれたハゼが、志賀野地域で突然変異したものとされる。ハゼの実から抽出される櫨蝋は、人の体になじみやすい特性があり、おしろいの下地や力士が髷(まげ)を結うときの鬢(びん)付け油、ハンドクリームやワックス剤などさまざまな場面で活用されているという。

 しかし、志賀野地域には生産者が1軒しか残っていない。県内で唯一、蝋の抽出を手がける「吉田製蝋所」(海南市)も、京都府や愛知県の和ろうそくの職人への生産が追いついていないという。計画では、地域の耕作放棄地などにブドウハゼを挿し木し、5年後には千本に増やすことを目指している。

 さらに、地域で和紙の原料を栽培し、移住者の和紙職人とともに地域工芸品「志賀野和紙」として発信する取り組みなども計画。「志賀野ブランド」として売り出し、地域の名前を残そうとPRを展開する。

 また、地域への移住者受け入れを進めようと、旧志賀野小学校(同町西野)の近くに空き家を借りた施設「志賀野ベース」を今夏にもオープンする予定で、お試し居住やイベントの拠点として活用される。地域住民の意見や情報を積極的に取り入れるという。

 このほか、地域の歴史や文化を継承する活動の実施や、「志賀野」の地名が入った案内看板をつくることなども視野に入れているという。

 県移住定住推進課の担当者は、「昔から住んでいる方たちにとって、『志賀野』の地名への愛着は大変強い。地域みんなで魅力を発信してもらい、コミュニティーの活性化にもつながれば」と話している。

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