リモート出演 進化中?
2020年6月6日 07時38分
コロナ禍でテレビ界は「密」を避けるため、バラエティーや報道、情報系などさまざまな番組で、スタジオ以外の場所からの「リモート出演」を導入している。この2カ月余、腕の見せどころといわんばかりに、演出の工夫合戦が展開されているが、実際は玉石混交でもあるようだ。コロナ後もこの手法は進化するのか。テレビ事情に詳しい2人に聞いた。 (竹島勇)
◆苦肉の策、いま旬に
5月24日、国民的人気の演芸番組「笑点」(日本テレビ系、日曜午後5時30分)でも、大喜利メンバーのリモート出演が始まった。自宅から出演した際、家族が写り込んだり、救急車のサイレンが聞こえてきたりと“ハプニング”もあり、話題となった。
リモート出演はパソコンのテレビ会議システムや、スマホや携帯電話の動画撮影機能、テレビカメラなどを利用。出演者の自宅や局内の別室、所属事務所など、どこからでも出演できるとあって、苦肉の策とはいえ“旬”になった。特にバラエティーで目立つ。
バラエティーに詳しい放送作家の松田健次は「リモートの導入当初、画質の悪さやぎこちなさがあり、視聴者はそれを受け入れていたという印象だったが、各番組がスキルアップし、リモート(の特性)を生かした企画が出てきた」と話し、二つの番組を評価する。
◆「感情移入できる」
その一つが「VS嵐」(フジテレビ系、木曜午後7時)の企画。それぞれリモートで出演した「嵐」のメンバーがデビュー曲「A・RA・SHI」を踊るが、途中から音楽を消去、誰がテンポに合わせて踊れたかを競った内容だ。
もう一つはテレビ東京で5月17日に放送された「リモート直撃バラエティ こんな田舎に高レビュー!」。東京でテレビ電話でつながっている女優の田中美佐子、お笑いコンビ「オードリー」の春日俊彰らタレントに、地方の飲食店から一般視聴者が食事風景やインタビューを自分のスマホで撮影して披露する構成だった。
「嵐のコーナーは個別リモートを生かして最高に楽しかった。テレ東は素人の映像の質は低いが、逆に感情移入できる。今後も使える手法」と称賛する。
一方、お笑いネタ番組「ネタパレ」(フジ系、5月15日)は「離れて出演したコンビ芸人の映像を合成していたが、せりふや表情が生きていなかった」とダメ出し。「笑点」は「5月24日の大喜利はセットが安っぽかった。メンバーの努力で乗り切っていた」と指摘した。
◆トーク「ぶつ切り」
自身もリモート出演が多い放送プロデューサーのデーブ・スペクターは、「コロナ禍がバラエティー番組のあり方を変えつつある」と展望するが、現状を「リモートでは面白くしづらく、困っている人ばかりだ」と冷ややかにみる。
バラエティーでは近年、スタジオの“ひな壇”と呼ばれる階段状の椅子での、芸人やタレント、モデル、出演作の宣伝に来た俳優らによるトークが主流になった。「出演者は明石家さんまさんや有吉弘行さんら司会者とアイコンタクトしながら笑いの流れを生み出していたが、リモートではぶつ切りに。つまらない話もクローズアップされて悪く目立つ」と否定的に解説。「クロストーク(言い合い)や自然な割り込みができない」とも話す。
米国では日本的なバラエティーは少なく、情報番組ではキャスターのほかには、個々のテーマについての専門コメンテーターしか置かないので、リモートが自然に見えるという。
「新型コロナの影響が続けば、少人数でも面白い新たなバラエティーが開発されるだろう」と期待も寄せている。
◆「遠くへ行きたい」気分
今年で放送50周年を迎える日本テレビ系の長寿紀行番組「遠くへ行きたい」が、新型コロナウイルスの影響で旅行が自粛されてきた中、インターネットなどを使ったリモート収録による特別編を7日と14日の午前6時半から放送する。
同番組は、現地に足を延ばすことが難しくなってから撮影を休止。そこで、各地から届く旅のVTRを東京で見ながら旅した気分を味わう「遠くへ行けない?!」や、過去に出演した3人の旅人が旅路を振り返りながらリモートでトークを楽しむ「もう一度行きたい!旅の思い出くらべ」など、工夫を凝らした仕掛けで番組を制作した。デビュー当時から番組に出演している女優の竹下景子らが出演。
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